高島屋の福袋に隠された狙い

2008.01.17

営業・マーケティング

高島屋の福袋に隠された狙い

竹林 篤実
コミュニケーション研究所 代表

今年の正月もまた、福袋を求めて行列ができた。多いところでは2万人もの人が並んだという。お客様からは大人気の福袋だが、百貨店はこれをどうマーケティングに活用しているのだろうか。

だから300万円で1000万円の価値というアピールは、名古屋地区の富裕
層にはしっかり届いたのだろう。その結果、高島屋は狙っていた顧客層
500人分ぐらいのリストを手に入れた。

少し下世話な計算をするなら、総額(上代価格)1000万円相当の商品と
いうことなら、高島屋の仕入れ値は600?700万といったところだろう
か(もっと低い可能性もあるけれど)。それを300万円で売るのだか
ら、実質的な持ち出しは最大でも400万ぐらい。これを持ち出しと見る
か、販促経費、あるいはもっと厳密にターゲット顧客リスト獲得経費と
考えるかは経営層の判断次第だ。

ともかく仮に顧客リスト獲得経費と捉えるなら400万円で、のどから手
が出るほど欲しい顧客500人分のリストを得たことになる。その獲得経
費は一人当たりコストに換算すれば8,000円である。相手が富裕層なのだ
から今後の見返りは大きい、すなわち『福袋作戦』のコストパフォーマ
ンスは相当に高かったではないだろうか。

しかも、この500人のリストには広がりを期待できる。お金持ち達はた
いてい独自のインナーサークルを形成しており、そのサークル内では強
力な口コミ効果を期待できる。いったん接点を作りさえすれば、フォ
ローの質の高さに自信を持つ高島屋としては、500の接点は極めて貴重
である。

これが名古屋高島屋の『福袋』大作戦である。もちろんこの福袋作戦は
ほかにも応用が利く。価格設定をどれぐらいにするかでターゲットが絞
られるのだから、ターゲットセグメントに福袋の中身も使えば、所得/
志向といった二軸の切り口を設定できるはずだ。

たとえば200万円の福袋で400万円相当の健康食品・世界の美食・宝
石・旅行など価格/志向マトリックスを設定すれば、いろんなターゲッ
トにかなり効率的にアプローチ可能。であるなら、パッケージングとし
て常に「福袋」そのものを使う必要もなく福袋的なるものすべてが応用
可能である。

マーケティングとは、実におもしろく奥深いものだと思う。

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