新国立競技場の新整備計画は上手く行くのか?

画像: bm.iphone

2015.09.02

経営・マネジメント

新国立競技場の新整備計画は上手く行くのか?

野町 直弘
調達購買コンサルタント

東京五輪エンブレムの問題の陰で、もう一つの大きな問題である新国立競技場の新しい整備計画が発表されました。この計画の一つの柱が「性能発注型の設計施工一括方式」です。これは民間の施工会社や専門工事会社の先進的な技術を設計に取り入れてコスト削減や工期を短縮しようという、いわゆる「まとめ買い」の手法です。果たして上手くいくのでしょうか。

昨日新国立競技場の新たな整備計画が発表されました。

新計画は従来計画に対して大きな違いがあります。工事費用(建設費と維持管理費)と工期の短縮を優先順位として高く設定し民間の知恵を活かしていきたいというものです。中でも前回との大きな違いが発注方式です。従来は設計施工分離方式であったのに対して今回の発注方式は設計施工一括発注方式を採用します。いわゆるまとめ買い(バンドリング)です。

震災復興案件や五輪関連施設などの工期短縮の要求が強い案件については、このまとめ買い方式の採用が増えています。これは施工者に設計を含めて一括で発注することで施工者の技術力を設計に反映しコスト・工期にメリットを見出していくことを目的としたものです。
確かに設計施工を分離することで様々な調整作業や日程、コストが発生することが容易に想像できます。一方で設計施工一括発注方式は発注者にとってコストや工期がブラックボックス化されやすいというデメリットも生じるでしょう。
最近ではこのようなデメリットを防ぐために「性能発注型の設計施工一括方式」という方式がとられています。性能発注型とは発注者が要求する品質やコスト、工期などの性能を明確にした上で、発注条件を整理して発注をする方式。つまり目的を明確にし提示することでそれを達成する手段はあくまでも受注会社側に任せるという方法です。
いわゆる提案型コンペの一種と言えるでしょう。
このようにまとめ発注することで設計に施工会社や専門工事会社の細かな先進技術の提案などを盛り込みやすい環境を作る、いわゆる製造業における開発購買のような手法がこの「性能発注型の設計施工一括方式」(まとめ買い)と言えます。

一方でこのような設計施工一括発注方式は公共調達では一般的ではありませんでした。
公共調達は会計法予決令などの法律の規制もあり、また従来より設計は建築主が対応するという考え方もあり、設計施工分離発注方式(ばらし買い)が一般的だったのです。
民間は全く逆です。多くの民間企業は建設工事はゼネコンに対して設計施工一括発注していました。また多くの企業では特定のゼネコンとのつながりが深く、特命による発注が殆どでったのです。2000年代に入ってから多くの民間企業で調達機能強化が進み、少なくとも特命ではなくコンペや入札が行われるようになりましたが、それでも公共調達のように設計施工分離発注という形態は、専門家がいないこともあり難易度が高いと思われていました。

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野町 直弘

調達購買コンサルタント

調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。

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