「失業なき労働移動促進政策」がもたらす、日本型終身雇用制度の終焉

2015.08.17

経営・マネジメント

「失業なき労働移動促進政策」がもたらす、日本型終身雇用制度の終焉

川崎 隆夫
株式会社デュアルイノベーション 代表取締役

8月14日の閣議に提出された2015年度の年次経済財政報告(経済財政白書)には、初めて「失業なき労働移動の促進が重要」との認識が示されました。「失業なき労働移動の促進」政策によって、今後雇用環境はどのように変わっていくのでしょうか?

甘利明経済財政・再生相は、8月14日の閣議に2015年度の年次経済財政報告(経済財政白書)を提出しました。今回提出された経済財政白書の中で注目される点は、「失業なき労働移動の促進が重要」との認識を、初めて打ち出していることです。

■「失業なき労働移動促進政策」の概要

一か月ほど前の話になりますが、日本経済新聞は「転職しやすい社会へ踏み出せ」というタイトルの社説を掲載しました。

転職しやすい社会へ踏み出せ

政府の規制改革会議の第3次答申は、雇用面では働く人が新しい職に就きやすい環境づくりに力点を置いている。「失業なき労働移動」政策は人を需要のある分野へ移すことで経済成長も促す。政府は全力で取り組んでほしい。

(中略)

答申のポイントは3つある。一つは再就職のための従業員の能力開発を支援する企業などに払う労働移動支援助成金の拡充。次に職業紹介などの人材サービス会社が活動しやすくする規制の見直し。そして裁判で不当解雇と判断された際の金銭解決制度の検討だ。

労働移動支援除籍金の拡充は人の技能向上を促し、伸びる産業に人が移りやすくなる効果が見込める。経営が悪化しても雇用を維持する企業に支払う雇用調整助成金はできるだけ抑え、人の移動を促すことを主眼とすべきだ。

(中略)

経営環境の変化が激しく、一企業の中だけで雇用を守るのには限界がある。柔軟な労働市場を整える政策を強力に進めるときだ。  <2015年7月11日(土) 日本経済新聞朝刊>

上の記事にあるように、規制改革会議の答申の内容は、従来の雇用調整助成金を柱とした雇用維持政策を180度転換し、今後は労働移動支援助成金を核とした「失業なき労働移動」を促進する政策に軸足を移すことを提言しており、今回の経済財政白書の内容も、この提言に沿ったものになっているようです。

しかし、金銭解雇制度については多くの報道がされていますが、「失業なき労働移動の促進」政策の柱となっている労働移動支援助成金の拡充については、報道では殆ど取り上げられていません。そこで、労働移動支援助成金の内容を明らかにするとともに、労働移動支援助成金の拡充によって、雇用環境にどのような変化が起きるのかなどについて、考えてみたいと思います。

■労働移動支援助成金の概要

労働移動支援助成金(再就職支援奨励金)とは、「雇用対策法」または「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」に基づき、事業規模の縮小等に伴い離職を余儀なくされる労働者等に対して、その再就職を実現するための支援を民間の職業紹介事業者に委託して行う事業主に対して助成するものであり、労働者の再就職の促進を目的としています。

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川崎 隆夫

川崎 隆夫

株式会社デュアルイノベーション 代表取締役

経営コンサルタントの川崎隆夫です。私は約30年にわたり、上場企業から中小・ベンチャー企業まで、100社を超える企業の広告・マーケティング関連の企画立案、実行支援や、新規事業、経営革新等に関する戦略計画の立案、企業研修プログラムの策定や指導などに携わってきました。その経験を活かし、表面的な説明に留まらず、物事の背景にある真実が浮かび上がってくるような、実のある記事を執筆していきたいと思います。

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