共同調達でコストが下がるのか?

2015.08.05

経営・マネジメント

共同調達でコストが下がるのか?

野町 直弘
調達購買コンサルタント

先日新聞報道で西日本の電力会社が共同調達推進で将来的には年間1000億円の費用削減を目指すという記事がでていましたが、共同調達で本当にコスト削減ができるのでしょうか、というお話です。

まずは電力会社が今回進めようとしている共同調達の対象品目ですが、多分同じような仕様のモノを購入しているでしょう。しかし、各社のカスタマイズ品であり、微妙に仕様が異なっていたりするのではないかと。こういう買いモノであれば、もし仕様を揃えられるのであれば①の3)、4)のケースに当てはまりサプライヤにとってもコスト削減が図れるようなメリットがでてくるでしょう。

もう一つ考慮しなければならないのは、特定のサプライヤにそのようなコスト削減メリットが生じるかどうか、ということです。例えば関西電力はサプライヤa社、中国電力はサプライヤb社との取引だったものを、共同調達することでサプライヤa社に集約できれば特定のサプライヤに生産増、販売増のメリットが生じます。
しかし(あくまでも仮説ですが)工事等の地域特性があるものではなく、送配電設備ということになると、産業構造を考えると、関西電力も中国電力も現状、同じサプライヤから購入しているモノも少なくないと考えられます。
こういうケースではサプライヤは変わらず、特定のサプライヤにとって全体の仕事量は増えないのですから、メリットは出にくくなります。そうするとやはり①の3)、4)のように「同じモノを買う」ということをしないとサプライヤのコスト削減は実現できません。

しかし「仕様を揃え同じものを買う」ということは購買資材部門だけで進められる訳ではなく、難易度がとても高いこと。例えばどこかの企業がリーダーシップをとり、参加企業間の調整を強力に進めていくことが必須です。全社で合意形成しながら進めるというやり方は頓挫する主要因となります。

そういう意味から今回の共同調達についての成功要因はサプライヤにとってもメリットが出やすい品目選定とどこかの企業(多分関西電力になると推察しますが)が主体となって仕様調整やソーシング業務を推進すること、この2点になります。
いずれにしても調達購買手法の中でも注目すべき動きの一つであることは間違いありません。

しかし、この新聞記事の最後に「(送配電部門)の部門統合は共同調達より大きな合理化効果を見込める」と書いてありましたが、全くその通りでして、そもそもこんなにたくさんの電力会社が必要なの、という疑問を感じるに至りました。

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野町 直弘

調達購買コンサルタント

調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。

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