オワハラは企業自らをオワらせる

2015.07.14

組織・人材

オワハラは企業自らをオワらせる

増沢 隆太
株式会社RMロンドンパートナーズ  東北大学特任教授/人事コンサルタント

大学生の就活が本格化するとともに、学生の間からオワハラ問題が表出しています。人事政策上、今の学生の心情を無視したオワハラは企業自身に致命的なマイナスを呼ぶ可能性があります。

内定を出す代わりに、今すぐ就活を止め、他社の選考を終われと強要するのがオワハラですが、特に優秀な学生への囲い込みが強まっており、経団連指針が8/1開始とした採用活動開始では、それに縛られない企業と学生の間には内々定も既に出始めており、オワ「ハラ」と呼ばれるようにハラスメントとなっている点が重大です。

・オワハラの効果と危険性(リスク)
戦略的な採用を提唱する立場から、現在行われているといわれるオワハラは非常にリスキーな手段だといえます。囲い込みで欲しい学生をキープできるメリットと同時に、失敗すれば企業のブランドイメージに致命的なダメージを与えかねないからです。採用プロセスにおいて、欲しい学生を自社に確定させることはクロージングです。クロージングとは交渉のヤマ場です。どれだけ良好な関係を築けたとしても、クロージングに失敗して交渉は成り立ちません。逆にいえば、クロージングに成功しさえすれば、極端な話、長い時間をかけた良好な関係作りも、接待も華麗なセールスツールも不要です。

営業のベテランなど交渉のプロは、このヤマ場においての力加減が絶妙です。強すぎず弱すぎず、正に相手に応じて変幻自在の対応によって交渉を成立させるのです。もちろんここにマニュアルや正解などありませんから、交渉のプロたちは自らの経験と勘をベースに、インテリジェンスを総動員して交渉をまとめます。営業に接待が欠かせないのではありません。交渉のカナメとして、接待での関係強化が有効だから接待をするのです、この戦略判断の順序を間違えれば、接待が目的化してしまい、無駄な営業経費がたれ流される恐れがあります。

また交渉の相手の心情をどこまで読めるかも交渉の帰結を決める上で重要です。就活の場合相手は大学生になりますが、今の学生のメンタリティを本当に理解しているでしょうか。企業が思う以上にネガティブな情報は学生間であっという間に広がります。特に今やバズワードとなっているオワハラは、採用したい学生=優秀な学生の間に、致命的な企業イメージの毀損となって広まってしまう恐れが高いのです。

・オワハラの効果への疑問
人事担当者にとって内定者確保が死命を決するものであるほど重要なことはもちろんわかります。しかし今一度採用の戦略目標を考えて下さい。内定者を確保することは採用の目的ではありません。優秀な新卒学生が入社し、定着し、戦力化することこそ、新卒採用の戦略目標のはずです。オワハラはこの目標達成の邪魔になるのです。

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増沢 隆太

株式会社RMロンドンパートナーズ  東北大学特任教授/人事コンサルタント

芸能人から政治家まで、話題の謝罪会見のたびにテレビや新聞で、謝罪の専門家と呼ばれコメントしていますが、実はコミュニケーション専門家であり、人と組織の課題に取組むコンサルタントで大学教授です。 謝罪に限らず、企業や団体組織のあらゆる危機管理や危機対応コミュニケーションについて語っていきます。特に最近はハラスメント研修や講演で、民間企業だけでなく巨大官公庁などまで、幅広く呼ばれています。 大学や企業でコミュニケーション、キャリアに関する講演や個人カウンセリングも行っています。

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