人工知能に「奪われない」仕事

画像: Frédérique Voisin-Demery

2015.05.09

ライフ・ソーシャル

人工知能に「奪われない」仕事

日野 照子
フリーランス ライター

IBMのワトソンが金融系の業務支援システムに採用されている。人工知能の研究成果は次々と実用化されている。人工知能に奪われない仕事を考えよう。

【人間にできるのは意思決定と責任をとることだけ】

 本来の意味での人工知能もいつか完成されるのかもしれないが、それよりも先に、この機械の方法で人間のまねをする技術の進歩の方がはるかに速く、現実社会に浸透するだろう。GoogleやFacebookが人工知能に莫大な投資をして実用化をもくろんでいる以上、おそらく想像以上に早く、その時はやってくる。それも、気がつかないうちに、じわじわと生活を変えていく。

 昨年、発表されたオックスフォード大学の「消える職業なくなる仕事」が物議を醸したように、人工知能などのコンピュータ技術の進歩により「仕事がなくなる」ことを心配する人は意外と多い。確かにワトソンが支払査定の膨大な規約や事例のデータベースから瞬時に答えを出せるなら、人間が苦労して知識を習得し、何年も経験を積まなければ判断できないため高度な専門性が必要だとされた支払査定は、誰にでもできる簡単な仕事になるだろう。医療や法律に関する専門的な仕事の多くも同じ構造にある。人間にできることは、意思決定と責任を取る機能だけになり、やるべき仕事は確実に変わる。だが、それは今にはじまったことではない。いつの世も、技術の進歩に合わせて昔あった職業は消え、新たな職業が生まれて、産業は進歩してきた。

【人工知能をうまく使って新しい仕事を生み出そう】  

今のところコンピュータが苦手とするのは「抽象化して考えること」だそうだ。単語の解析で適切な回答を得られても、人間は「文脈として」何らかの理由をつけてくれないと腹落ちしないようにできている。抽象化するために、人はストーリーを作る。これは人間の強みだ。データ分析はコンピュータ任せでも、広範囲な領域の情報を組み合わせて判断する「総合診療」のような判断はやはり人間の仕事なのだ。

 いわゆるデザインのようなクリエイティブな仕事でもコンピュータが「人に好まれそう」かつ「使いやすい」形や色を決めてくれるようになる。だったらそれを利用して、より優れた作品を作れるようになればいい。コンピュータに「人に求められる」コンテンツのテーマや使うべきキーワードを指示されても、さらにその上にオリジナリティを加えることはできるはずだ。人工知能が、産業構造のどこにもっともインパクトを与えるのかを考えよう。仕事が奪われるなどとネガティブに捉えて技術の進歩にあらがうより、うまく取り入れる方がよほど楽しい。人工知能を正しく知ることで、新たな仕事や仕組みが見えてくる。

参考文献:
松尾豊、塩野誠著『東大准教授に教わる「人工知能って、そんなことまでできるんですか?」』
松尾豊著『人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの』

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いつか時代は変わる。言葉は世界を変え、思いは伝播していく。誰かが誰かを抑圧し、搾取する社会を変えたい。

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