「正解は一つ思考」のリスク

2007.12.18

仕事術

「正解は一つ思考」のリスク

竹林 篤実
コミュニケーション研究所 代表

子どもの学力が低下している。OECDが実施した学力テストの結果、日本は数学的応用力、国語読解力、科学的応用力のいずれについても前回の成績を下回った。その背景には実はかなり根源的な問題が潜んでいるのではないだろうか。

問題の核心は応用力にある。たとえば数学でも単純な計算力なら、日本の
子どもたちだって決して捨てたものじゃない。ところが応用問題になると
どうにも苦手となるのはなぜか。計算問題は解き方がほぼ決まっているの
に対して、応用問題は自分で解法を考え出さなければならないからではな
いか。応用問題となるとその解法はたいていの場合一つとは限らない(計
算問題でも早く・楽にやる方法はあるけれど)。一つの問題に対するアプ
ローチの仕方はいくつもある。

極端な捉え方かもしれないが、応用問題に関するこうしたアプローチの多
様性を日本の子どもたちは本能的に嫌うのではないだろうか(嫌うという
ほど強い意識はないのかもしれないが)。単純に答えは一つ、解法も一つ。
これならすっきりしていているし、安心して問題に取り組むことができる。
しかし解法がいくつかあり、もしかしたら答えさえも何通りかある(数学
ではそんなことはあり得ないけれども)状態になると途端に居心地が悪く
なる。

仮説に仮説を重ねる。

こうした思考パターンを「正解は一つ思考」と呼ぶことにする。スパッと
答えを出さんかいモードと言ってもよい。きわめて潔いスタンスである。
大阪弁なら「ごちゃごちゃ言うてんとはっきりせんかい」といったところ
か。この潔さを男らしいと表現することも可能だろう。

しかし、そうした(ある意味乱暴な)割り切り方をすれば深刻なリスクを
抱えることにもなる。特に数学などではなく現実の問題に対処するときに
は致命的な誤りを犯す可能性が出てくる。

なぜなら、現実問題を考えるときには時間軸という不確定要因が必ず入っ
てくるからだ。時間が経てば、問題の前提となっていた条件はたいていの
場合変化する。この変化を計算に入れていないがために過ちを犯すケース
が案外多い。さらに最悪なのは条件が変わっているにもかかわらず、現実
的な対応を変えないことだろう。

なぜ対応を変えないのか。いったん決めた処置なり判断を変えるのは、過
去に下した判断の誤ちを認めることにつながる、と考えるからではないか。
このような思考パターンの根底にあるのは「正解は一つしかないはずだ」
信仰である。

しかし現実問題に対する正解は、現時点での状況という極めて暫定的な条
件の下で、さまざまなパラメーターの組み合わせの中から選ばれる最適解
群の一つでしかない。条件が変われば、あるいは考慮に入れるパラメータ
ーが変われば、最適解も必然的に変化する。

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