国公立大学2次試験廃止!?~大学入試で問う力とは(後)

2013.10.18

ライフ・ソーシャル

国公立大学2次試験廃止!?~大学入試で問う力とは(後)

寺西 隆行
(株)Z会

教育再生実行会議において、高大接続や、大学入試改革の話が中心になりつつあるようです。 これからの時代を生きる生徒に「大学入試」の段階で何を問うことで、適切な選抜が可能になるのでしょうか?前編に続く記事です。


以上により、教育再生実行会議の配布資料1において、「2次試験廃止」との表現を導いた現行入試の問題点については、2次試験を廃止するという状況までつくらなくても、今のよい部分を活かしながら、解決法を模索できる気がします。

そして…
現在の2次試験の形態を活かしつつ、教育再生実行会議が指摘する欠点を補う入試の形を、2次試験以降に論点を絞り、私案を出すと…。

◆教育再生実行会議が指摘する欠点
A.知識偏重である
B.1点刻みである
C.アドミッションポリシーと(現状の)大学入試で判別できる能力にギャップがある
D.主体的に学習に取り組む力が高校段階でつかない
E.合格者の多様性が確保できない
これを補う入試の形としては、下記が考えられます。

1.2次試験で記述による解答の割合を増やす
2.点数化される論文試験を課す
3.2までで、各大学のアドミッションポリシーに沿った学生を選抜しきれないと判断した場合、その大学においては、2までの合格者を9割から9割5分にとどめ、2までの合格ボーダーライン近傍一定割合をセレクトし、面接または点数化されない論文などの試験を課す

1にするだけで、知識偏重は是正されます(欠点Aの克服)。

2により、アドミッションポリシーに近い学生を選抜する問題を設定する可能性が開けますし、論文では主体的なコミットメントも試せます(欠点C、Dの克服)。5教科試験との点数の割合は、アドミッションポリシーに応じ、各大学個別に決めれば済むことです。

最後に3により、合格者の多様性も確保できることが期待できますし、1点刻みの試験の代案としての納得性が増します(欠点B、Eの克服)。

この形は、今の大学入試制度上で可能ですし、近い形で実施している大学も相当数あるはずです。

「2までの生徒に、3を課す」あたりが、「2までで一度合否を決め、それとは別に3の割合が多い試験を実施する」(現実的な)形態である「分離分割方式」(前期・後期日程での開催)とは異なる提案になりますが。

3について少しだけ補足すると、先に取り上げた面接は、「面接の前までの試験で合格してきた人間を“落とす”ための面接試験」という見せ方をしていますが、3では「面接の前までの試験で不合格だった人間を“受からせる”ための面接試験」という位置づけで見せています。実態はまったく同じなのですが、20歳未満が多数と言う発達段階を考慮すると、点数化されない試験を課す場合には、「受からせるためのもの」という見せ方のほうが、現実に無理なく対応できると思います。


以上、教育再生実行会議であげられた課題を解決する方法論を考えてみました。
課題解決の案を考える際は、どうしても「制度をどうするか」「手法をどうするか」に話がいってしまいますし、それはそれで仕方がないことなのですが、論を展開する間、あるいは論を普段から考える間、決して忘れてはいけないのは、「大学入試で問う力とは何か。それにはどんなものがあるか。それらの力を問う割合(バランス)はどれくらいか。」という視点です。ここを忘れてしまうと、それこそ、制度のための制度になってしまいます。

個人的には、「大学入試で問う力は、学力である。学力とは、学ぶ力のことである。」と定義できると思います。学力を学ぶ力と定義しないから、学力=5教科の力と(無意識に)定義している人と、そうではない人で、論がすれ違う。

入試では、学力を問うと定義しないから、人間力とか主体性とか、別の表現が出てくる。本来は、「学力」の中に全部包含されており、包含されている中の力を要素分解し、「5教科の能力」「主体性」その他の能力をどれくらいの割合で見る試験が望ましいか、目安を文科省が提示し、あとは大学個々のアドミッションポリシーに従い、割合を変化させ、それに即した試験を実施する、でいいと思います。

いずれにせよ、繰り返しになりますが、「大学入試で問う力とは何か。それにはどんなものがあるか。それらの力を問う割合(バランス)はどれくらいか。」と、大学入試の制度設計を考える際は、問いかけ続けなければいけないことだと思います。

※本記事は、(株)Z会勤務の筆者の個人的な見解です。

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寺西 隆行

寺西 隆行

(株)Z会

文部科学省広報戦略アドバイザー 経済産業省「未来の教室」教育・広報アドバイザー 三島市GIGAスクール推進アドバイザー 等

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