テレビ番組『ほこたて』と馬鹿について

2013.09.27

経営・マネジメント

テレビ番組『ほこたて』と馬鹿について

坂口 孝則
未来調達研究所株式会社 取締役

テレビ番組『ほこたて』と馬鹿について深い相関がある(笑)

人気テレビ番組『ほこたて』があります。お笑いコンビタカアンドトシが司会を務め、大島優子さんや東野幸治さんが出演する番組です。簡単に説明しますと、「最強のドリル」対「最強の金属」等の対決を放送し、どちらが優位かを決めるものです。たとえば、この例でいえば、「何にでも穴を空けるドリル」で「絶対に穴が空かない金属」に穴が空くかをトライするのですね。一般人の私たちからすれば、ドリルと金属なんてものは、技術的な優劣はなかなかわかりません。それを、テレビらしく視覚化した傑作番組です。

この番組は面白いと私は思います。しかし、気になるのが、出演者たちの自信満々ぶりです。「絶対勝てます!」とか「俺の技術に勝てる奴は誰もいません」とか。あるいはハッカー対セキュリティ会社の対決では「ウチのシステムは誰にも破られません」とか。もちろん、それはテレビの演出かもしれません。それに、それだけ矜持がなければ番組に出演できないでしょう。

しかし、どうしても違和感を抱きます。たとえば、私だったら、自社システムのセキュリティを担ってくれるとしたら「絶対大丈夫」と豪語するひとよりも、「絶対はありえない。ただ、こういう条件下であれば大丈夫だ」と語ってくれる方を選びます。そしてそれが真摯な態度ではないかと私は思うのです。

ちょっと話がそれます。たとえば「あなたが買っている価格はもっとも安価ですか?」と訊かれて「はい、世界一です」と即答する調達・購買担当者は、控えめにいっても、相当な馬鹿だと思います。確認しようがありません。「こういう条件下では平均よりも低いでしょう」と述べるのがせいぜいだと私は思います。それと……。

いまの自分がもっとも優れていると考えるのは止めたほうが良い。そう私は思います。仮にそうであっても、より高みを目指す姿勢のみでひとは成長すると思うからです。

「勝てますかね?」と訊かれたら、「やってみなければわかりません」

が真摯な答えであるにもかかわらず、多くの場合は「そうじゃなくて、意気込みを教えて下さい」と言われます。そのときに「勝ちたいと願う気持ちは、実際の勝敗と関係がありません」などと答えると、日本人的には最悪です。どうも、日本人は、こんなとき「絶対勝ちます! 応援してください! 勝ったらこれまで育ててくれたお母さんに自分の姿を見せてあげたい」などという型があります。

おそらく、多くのひとも、その型に縛られすぎて、自由な受け答えができなくなっているのでしょう。しかし、と私は思うのです。意気込みよりも、スキルや技をもうちょっと学術的に解説してくれたほうが良いなと。そして、テレビだけではなく、仕事の場でも、私は意気込みなんてものじゃなく、技術や定量的・論理的内容を追求していきたいと思っています。

もうそろそろ、やる気とか意気込みとか勢いとか、そういうのやめませんか。などとテレビ番組を見ながら考えていました。

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坂口 孝則

未来調達研究所株式会社 取締役

大阪大学卒業後、電機メーカー、自動車メーカーで調達・購買業務に従事。未来調達研究所株式会社取締役。コスト削減のコンサルタント。『牛丼一杯の儲けは9円』(幻冬舎新書)など著書22作。

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