「衣食住+職」足りて、“精神の飢餓感”を起こせるか

2013.07.23

組織・人材

「衣食住+職」足りて、“精神の飢餓感”を起こせるか

村山 昇
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

「腹の飢え」がなくなった私たちが、それに代わって、何かもっと大きな価値を成就したいという「心の渇き」を内面に起こし続けることができるのか。これは、個人にとっても、組織・社会にとってもほんとうに大きな課題です。

先日、「仕事・キャリアを考える」セミナーをやりました。参加希望者を公募するタイプのもので、いろいろな業界、職種から集まっていただきました。私は普段、企業内研修を主に行っており、顧客企業の外で、こうしたオープン型のセミナーはほとんどやりません。ですが、受講者のいろいろな個人発表を聞くに、私もたくさんの気づきが得られました。

何よりもよかったのが、みなさんの真剣に参加される熱でした。セミナーを終え会場を出るときに、今晩はほんとうに“よい会”だったなと思えました。 “よい会”というのは、つまり、参加者の1人1人が真摯に仕事・キャリアを考え、それを共有し合い、啓発し合い、未来への元気を湧かし合う場ができたという意味で、よい会でした。

何年も研修やセミナーをやり重ねてくると、どれだけのものが受講者側に沁みているか、響いているかがわかるものです。その沁み具合や響き具合が、今回は近年ではまれなほど強く感じられました。人は深い内省によって心の奥底から力を得ることがありますが、そのときの静かな高揚感が、会場全体にずしんと満ちたように思います。

帰りの電車の中で私は、なぜ今晩は特にそういう会ができたんだろうと考えを巡らせました。で、得た答え。───それはやはり「飢餓感」の違いなんだろうな、と。

今回のセミナーの主催は大手の人材紹介会社でした。そのため参加者の多くは、その人材紹介会社とつながっている人たちです。つまりは目下、転職を考えていたり、求職中であったり、自分のキャリアに対し何かしらの手を打たなければと意識が立っている人たちです。実際、セミナーが終わった後、何人も私のところへ個別にキャリアの相談に来られましたが、いずれも転職や起業、再就職、留学に関する内容でした。中には深い悩みの方、強い決断をせねばならない方の相談もありました。また、「うちの会社は中小なので、こういう社員教育はなかなかやってもらえません。きょうはほんとうに来てよかったです」と、そもそも普段から学びの機会に恵まれない方のお礼の言葉もありました。

悩んでいるからこそ、求める気持ちが強くなる。
飢えているからこそ、手にした機会を大事にする。

そんなことをあらためて感じ取った一夜でした。飢餓感は真剣さを呼び起こします。その観点からながめると、私が普段接している企業内研修の場の雰囲気は、悩みの中から求める気持ちや、学びの機会を大事にする真剣さが必ずしも強くないと感じてしまいます。もちろん意識がかなり高い人もいます。けれど、「全員必須の研修です」といって集められる中には、「業務が忙しいのに研修か」とか、「こんな研修、自分には意味ないよ」と最初から決めつける人がいたり、表面は真面目に受講していても内省をいっこうに深めないまま適当にやり過ごす人も多かったりします。

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村山 昇

キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。

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