前田敦子はキリストではない~日本製造業の正当なる後継者AKB48

2012.12.04

経営・マネジメント

前田敦子はキリストではない~日本製造業の正当なる後継者AKB48

坂口 孝則
未来調達研究所株式会社 取締役

日本製造業の後継者はAKB48に他ならない。カイゼンを徹底し、顧客第一主義を貫く商品づくりの2点において、モノづくりとAKB48は奇妙な合致を見せる。AKB48に未来を感じることは、日本に未来を感じることだ。

・AKB48~日本製造業の正当な後継者

2012年6月に実施された第4回AKB総選挙では総投票総数は138万票にいたった。第1回の総選挙が5万票だったのにくらべて、わずかの期間で27倍ほどに拡大している。みんながテレビ中継に釘付けになったこのイベントは、たしかに国民的イベントといえるほどに成長した。また、先日発表された2012年の上半期のオリコンチャートはAKBとその姉妹グループで塗りつくされた。

このモンスターグループのヒット要因はなんだったのか。

これまで、AKBの躍進理由がさまざまな観点から説明されてきた。もちろん、楽曲の良さ、メンバー一人ひとりのキャラ、「会いに行けるアイドル」というコンセプト抜きには語れない。しかし、説明される要因のどれもが、決定的なものではない。もし何か一つの要因だけによるものであれば、他のアイドルグループが真似して、あっというまに人気を博しているはずだ。

2005年に結成され、2006年からライブを本格化したAKB48だったが、ときにメンバーの数のほうが観客よりも多いこともあった。そんなときにも秋元康さんは自ら会場に出向き、ファンの一人ひとりに、よりよくするための改善点を訊いてまわった。また、AKBのスタッフは、ファンが集うファミリーレストランに出かけ、既存のファンを少しでも楽しませることのできる方法論を模索していった。もちろんクレームも入ってくる。それをおなじく一つひとつ解消していった。秋元康さんの発明は「カイゼン」「顧客志向」が製造業だけではなく、アイドル生産にも応用したことだった、と私は思う。日本製造業の代表選手である自動車メーカーは、生産システムや商品を一つひとつ顧客に合わせて変化させていった。私が自動車メーカーに勤務していた経験からいえば、お客のどんな小さな苦情もすべて解消するように検討する。使い勝手、乗り心地、デザイン、そして販売員の態度にいたるまで、次世代商品の開発や店舗運営に反映していく。その「カイゼン」「顧客志向」の徹底さは、異常とも思えるほどだ。

かつて日本の製造業が優れていた理由は、何か特定のプロセスにあったのではない。それぞれのプロセスが他国とくらべて1%だけでも2%だけでも優れていた。それが積み重なることで大いなる優位性につながっていったのだ。

・お客の声、得票数、無思想

メンバー一人ひとりの顧客志向も凄い。指原莉乃さんはファンを楽しませるために、一日でブログを100回も更新して3500万ビューを達成した。他のメンバーもGoogle+では過剰なほどに書き込んでいる。ライブにいけば、彼女たちの一生懸命さに、多くのファンが満足して帰宅する。握手会では手が腫れても頑張り続ける。ファンを差し置いて特定男性と恋愛することは禁止だ(ちなみに、日本製造業が採用したケイレツ発注とは、ケイレツ企業に自社グループだけへの愛を誓わせるものだった。恋愛禁止、グループへの忠誠、ファンこそ恋人、というAKBはかつての日本型製造業にそっくりではないか)。

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坂口 孝則

未来調達研究所株式会社 取締役

大阪大学卒業後、電機メーカー、自動車メーカーで調達・購買業務に従事。未来調達研究所株式会社取締役。コスト削減のコンサルタント。『牛丼一杯の儲けは9円』(幻冬舎新書)など著書22作。

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