ドロリッチ:鋭敏な市場ニーズの把握で市場を開拓し続ける挑戦

2012.10.17

営業・マーケティング

ドロリッチ:鋭敏な市場ニーズの把握で市場を開拓し続ける挑戦

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 ヒット商品を作るには。そして、ヒット商品をロングセラー化するには。グリコ乳業は大ヒット商品「ドロリッチ」で、商品開発の一大テーマであるその解を「環境変化への対応」という基本から導き出した。その過程を開発チームへのインタビューで追ってみよう。

■2011年の転機

 ドロリッチは2007年に発売され、2009年には一大ブームを巻き起こし、市場を席巻した。しかし、翌年から徐々に売上は右肩下がりになってきた。理由は明確だ。PB(プライベートブランド)の拡大で棚が狭められたことと、他社のタピオカ飲料など「食感飲料」としての競合の出現である。手作りスイーツブームで消費者の舌が肥えてきたことも原因だ。購入者数、購入回数とも減少傾向が明らかになってきたのである。
 「ブランドの延命のためには、ブランドエクステンション(派生商品の投入)が行われますが、もはや本体商品のテコ入れが欠かせないと判断しました」と担当者は言う。
 市場のさらなる変化も明確になっていた。グリコの調べで2007年当時と比較すると、朝・昼・夕の「基本の三食」の崩壊が進んでいた。朝・昼の欠食に加えて、夕食も欠食する傾向が見て取れた。では、その変化は何を表しているのか。「おやつ化する食」である。基本の三食が乱れる一方、間食シーンは平日10時、15時、16~17時、20時、22時という5回のピークが確認できたという。

■新製品の上市

 デザートの食事化。その市場ニーズの変化を受けて、開発チームは「コロンブスの卵」的な方針転換を決めた。今までも製品改良を行ってきたが、それらは全ていかに味をよくするか、風味をよくするかという「コーヒー」部分の改良であった。しかし、ニーズの腹持ち満足感を満たすためには、ゼリーとクリーム感の改良に踏み切ることが欠かせない。そこで、製品の構造を従来から根本的に改めることとなった。特筆すべきは市場の変化に対応して、開発チームが社内を俊敏に動かしたことだ。通常、1~2年程度を要する開発期間を、わずか6ヶ月に短縮したのである。
従来は容器の中では「クリームがコーヒーゼリーに程よく不均一に包まれた状態」になっていた。それを、クリームを「ホイップクリーム」に変更し、「ゼリーの上に乗った状態」に作り替えたのである。飲むときに強く振ることでホイップクリームの中にコーヒーゼリーが浮いているような状態となり、「クリームたっぷりのデザートを食べたときのような満足感を味わえるようになった」という。
 製品の進化は明確だ。筆者も取材時に現行製品と新製品を飲み比べたが、クリームの濃厚さが際立ち、味わいと、腹持ちの良さが格段に向上した。試飲会ではあるコンビニエンスストアのバイヤーは「新発売当時の感動を思い出した」と感想を漏らしたという。

 新製品は10月22日に北海道~関西地区で、11月5日に中四国地区以西で発売される。CM展開の他、そのコンセプトと新たなる製品価値は「体験すればわかる」ということで、サンプリングなども計画しているということだ。リニューアルによって、市場のニーズを捉えたモノとなっているか、一度お試しすることをお薦めしたい。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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