バイヤー業務の二面性

2012.07.04

経営・マネジメント

バイヤー業務の二面性

野町 直弘
調達購買コンサルタント

バイヤーはそもそも二面性をもった職業です。多くのバイヤーはそれにストレスを感じているのが実態だと思います。一方で、社内にない専門能力の自社への活用や、それらのノウハウを生かした本当に差別化を図れた最終製品を生み出せる立場にあります

当コラムは2005年の夏にブログで取り上げたものの再掲です。
7年経った今世の中はどう変わっていたでしょうか?
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「バイヤーはそもそも二面性をもった職業(自社と取引先の両社の立場にたって考え、行動しなければならない立場)です。多くのバイヤーはそれにストレスを感じているのが実態だと思います。一方で、社内にない専門能力の自社への活用や、それらのノウハウを生かした本当に差別化を図れた最終製品を生み出せる立場にあります。」

過去に私が購買部門に配属になって一番悩んだのは、この点です。

私が社会人になって初めて配属されたのは、某自動車会社の原価管理部門です。そこでは、新製品の原価企画および、予算計画策定や原価管理等でした。
仕事の目的は極めて単純で、如何に収益を上げていくか?です。
ここでは、数字やロジックが全てに近い世界でした。

その後、購買部門に異動になり、そこでまず感じたのが、自分が何を目的に、どちらの方向を向いて仕事をすればよいのか?という点でした。よいものを安く買うことが目的であれば、理屈やベンチマーク(その頃はそういう言葉はなかったですが)、他社比較など、を使って妥当な価格を決めればよいのですが、一方で、私の査定値が必ずしも自社の目標値(要請ベース)を達成するとは限りません。また、それでは目標価格を達成するために、力づくで価格決定しようと思えば、ある程度はできない訳ではないのですが、そういう理屈にかなわない価格決定が本当によいことかどうか、に疑問を感じていました。

一方で、バイヤーはサプライヤーにとっての唯一の堤防です。
トラブルが起こった時や、緊急の対応時に、議論されるのが、責任の所在です。最終的に責任論争でありがちなのは、一般的に言えば、買い手としての力を使って、売り手に無理を承知で責任や対応を迫るというものです。

バイヤーは会社の中で、そこをせきとめる堤防役にならなくてはいけないと常に感じていました。サプライヤーに対しては、自社を代表して、言動し、時には無理難題をお願いしなければなりません。一方で、自社に対しては、サプライヤーの代弁者として、言うべきところは言い、譲れないところは譲らない。こういう二面性があり、どこでバランスを取るか、が非常に難しいと常に悩みながら業務をしていました。

営業の方も同様の悩みはあると思いますが、「お客さんにこういうこと言われているから、お願い」というように、お客さんの声を神の声として利用できますから、やや位置づけが違うかもしれません。

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野町 直弘

調達購買コンサルタント

調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。

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