移ろうCommon Sense:新幹線車中の風景

2007.11.14

ライフ・ソーシャル

移ろうCommon Sense:新幹線車中の風景

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

Common Senseとは「良識的な判断力」と訳される。しかし、その基準は時と共に移ろうようだ。新幹線の車内にて、その現場に直面した。

「その臭い、何とかなんないですかねぇ」。隣席からの言葉の意味を、筆者は一瞬理解できなかった。

所は新幹線の車中。時は午後1時を回ったところ。筆者はあまり車中にて飲食をする習慣はないが、その日はその時間に駅弁を摂らねば食事のタイミングがなかった。正午を過ぎているが、昼食として同様に駅弁を広げる人も少なくなかった。ましてや最近は「豪華弁当」の登場以来、ちょっとした駅弁ブームだ。隣人は何が気に障ったのかだろうか。

同じ駅から乗車した彼は、着座するや否や、ノートPCを広げ何やら仕事を始めた。
車掌が来た時も、パソコンの画面から目を離すことを厭うように乗車券を差し出した。
何とも忙しいヤツだなぁ。と思った。
彼の世界では、恐らく新幹線は「執務空間」なのであろう。確かに昨今の車中ではノートパソコンを広げる乗客が随分と多い。平日ともなれば、行楽客よりもビジネス客の比率が大半を占める。かくいう筆者も行楽の数十倍も商用で新幹線を利用しているし、その移動中に記したコラムも数限りない。斯様に、今日、新幹線は行楽よりもビジネスに多く用いられ、その車中でのルールも変遷しているようだ。

筆者が広げたのは、「二段重ね鰻弁当」。タレを染み込ませた飯に、鰻の蒲焼きが二重に仕込まれているという逸品。「鰻の蒲焼き」の旨味を形成するに欠かせない馥郁たる香り。冷めた弁当となっては随分と魅力を失うが、香気を醸し出すために製造業者は心を砕いているはずだ。確かに幕の内弁弁当と比べれば、少々香気が立ち上ったかもしれない。駅弁となっても主張する鰻の香りが隣人は気に食わなかったようだ。

恐らく、執務をこなしている彼からすると、「昼休みの時間外に臭気を発する弁当を広げ、ビジネスを妨げるとは何たる行為」と受け取られたのだろう。確かにオフィスで定められた昼食時間以外に鰻弁当を広げられるのは迷惑だ。

「平日に商用で移動するビジネスマンがほとんどの新幹線車両内は、ビジネスルールが適用されて然るべき」というのは、ひとつの今日的なCommon Senseであろう。乗客比率を見ても、その乗客たちの行動を見ても頷ける部分は多少ある。今回の筆者のように、自らも商用のさなかに呈された不満であれば、まだ許容すべき解釈もできる。
だが、商用中に食事の時間がずれたというようなことではなく、「たまに休暇が取れた」というような「ハレの日」だとしたらどうなのか。
平日なので、幸いにも混雑が回避できるかもしれない。秋の京都の紅葉はさぞや綺麗だろう。休日なら大混雑な京都を少しでも空いた状態で楽しめる僥倖に感謝して新幹線に乗る。駅弁の一つも広げたくなるだろう。休みとあれば、少々ビジネスタイムとはずれることもあるだろう。そんな時に隣席から苦情が呈されたとしたら、せっかくの休日が、随分と興醒めになってしまう。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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