企業戦略と調達・購買戦略(その2)

2012.03.23

経営・マネジメント

企業戦略と調達・購買戦略(その2)

野町 直弘
調達購買コンサルタント

企業戦略と調達・購買戦略は同期して語られることはあまり多くありません。 多くの企業で経営者から見ると調達・購買部門は便利なコスト削減請負人程度の位置づけなのかもしれません。しかし、調達・購買の機能そのものや戦略は企業戦略や経営者の期待、時代背景等によって、もっとダイナミックに変化する(させる)べきものです。

コマツは協力会組織である「コマツみどり会」を軸にサプライヤ(協力会社)との協力関係を競争力強化につなげています。
「みどり会参加企業との協力関係を築き、優先発注、資金繰り支援、もっと言えば『文化まで共有』していくことでコマツグループ全体としての競争力強化を果たす。」というのが趣旨です。これは単に調達・購買部門だけの取組みではなく会社としての方針です。
『従来型のケイレツとは大きく異なる。「理由のない値下げ要請はしない」「注文キャンセルは禁止」。目指すは「農耕民族型」の部品調達。』ということなのです。
コマツの坂根会長が著書「ダントツ経営」の中でみどり会について多くのページを割いて記述をしていることからも、このような調達・購買戦略が企業戦略と結びついていることがよくわかります。
著書の中で坂根会長は「年2回の取締役会でみどり会企業の収益動向を議論する場を持っている」とおっしゃっています。
驚くべきことです。

他に関連会社でもない協力会社の収益動向について調達・購買部門だけでなく全社、それも取締役会で議論をしている企業があるでしょうか?協力会社の収益動向を経営層が議論するということは、実は自社の収益を議論することと他ならないからだ、という理解がそこにはあるのでしょう。
コマツにとってみると協力会社は単なる協力会社の位置づけ以上の存在なので。
単に「安いところから買えばいいや」という発想ではこのような企業戦略は生まれてきません。当然のことながら過度の依存体制、協力体制にはデメリットもあります。知らぬ間に緊張感がなくなり、競争力がない「馴れ合い」状態になってしまったら取り返しのつかない”ゆでガエル状態”になります。
このような課題を上手く解決しながら常に「競争力ある」サプライベースをいかに継続発展させていけるか、正に同社の経営戦略そのものであり経営戦略に要請された調達・購買戦略なのです。

続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。

Ads by Google

この記事が気に入ったらいいね!しよう
INSIGHT NOW!の最新記事をお届けします

野町 直弘

調達購買コンサルタント

調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。

フォロー フォローして野町 直弘の新着記事を受け取る

一歩先を行く最新ビジネス記事を受け取る

ログイン

この機能をご利用いただくにはログインが必要です。

ご登録いただいたメールアドレス、パスワードを入力してログインしてください。

パスワードをお忘れの方

フェイスブックのアカウントでもログインできます。

INSIGHT NOW!のご利用規約プライバシーポリシーーが適用されます。
INSIGHT NOW!が無断でタイムラインに投稿することはありません。