ロイヤルカスタマーを獲得する「ラーメン二郎」のサービス

2011.09.22

経営・マネジメント

ロイヤルカスタマーを獲得する「ラーメン二郎」のサービス

松井 拓己
松井サービスコンサルティング ・サービスサイエンティスト

ラーメン二郎と言えば、知る人ぞ知る「毎日行列のできるラーメン店」で、ジロリアンと呼ばれるヘビーリピーターが非常に多い事と、WEBでの検索数がラーメン店の中でダントツであることで有名です。そんなラーメン二郎がなぜこれほどまでにコアなファンを獲得できているのかをサービスサイエンスの視点で見つめることで、ロイヤルカスタマーを獲得するためのポイントを探ってみたいと思います。

面白いですね。スターバックスのものと比べると、二郎らしいユーモアを感じます。
この社訓(ビジョン)で今回着目したいのは、この面白い社訓の「表現」と「三、Love & Peace & Togetherness」です。この2点からどんなことが見えてくるかというと、「ジロリアン」の存在です。
つまり、この社訓はジロリアンに見せることを前提に書かれているように思うのです。その中に「Togetherness」という言葉が入っている。つまり、「ラーメン二郎」というサービスは、サービス提供者である「店主」とお客様である「ジロリアンの方」とで共創していきましょうというメッセージを強く感じるのです。

■サービスはお客様と一緒に作り上げるもの

サービスというのは、製造業の製品と違って、お客様と対面で「一緒に創り上げる」という大きな特徴があります。しかし、日本は製造業文化の価値観でサービスを提供してしまっている企業がまだまだ多いようです。どういうことかというと、「良いサービスは喜ばれる」という考え方です。この考え方で提供されたサービスは「余計なお世話」になってしまう可能性が非常に高いです。お客様と一緒になってサービスを作る。お客様から何かを頂いてサービスを作り上げる。そういった考え方が、お客様との繋がりを強固なものにしてくれるのだと思います。

ラーメン二郎においては、ラーメンという製品の提供ではなく、ラーメン二郎という世界自体を楽しんで頂くというサービスを提供しているのだと思います。その上で、お客様と一緒に作るという「Togetherness」は極めて重要な考え方になります。下記は、ラーメン二郎でお客様にして頂いていることの一例です。
・独特の言葉で「カスタマイズ」を告げてでメニューを完成させる。
・水は自分で注いでくる。
・食べ終わった器はカウンターの上段に返す。
・食後にカウンターを雑巾で拭く。
・「品切れ」を行列に伝える。

このような「サービスの共創」を通して、ラーメン二郎自体を一緒に創り上げているんだという一体感や愛着を感じて頂けると、ファンやロイヤルカスタマーになっていただける可能性がぐっと高まるのではないでしょうか。
そうなると、このロイヤルカスタマーの方々が自ら「サービスの共創」における最大の貢献をして下さることになります。それが、「クチコミ」という名の営業活動です。
実際に、ラーメン二郎やスターバックスでは、自らの広報活動というのはほとんど行っていません。にもかかわらず、多くのお客様に利用して頂けているのは、まさにロイヤルカスタマーのクチコミの効果が絶大だということです。

ということでこれまで見てきました様に、「サービスはお客様と一緒に創り上げる」という考え方で、今一度自社のサービスを見つめ直してみると、改善のポイントが見えてくるかもしれません。別の言い方をすれば、「良いサービスは喜ばれる」という価値観でサービスを提供してしまっていて、お客様の事前期待に合っていない部分は無いでしょうか。お客様をサービスに巻き込むという考え方は、これからサービスがますます複雑化する中で、重要なポイントになるのではないでしょうか。

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松井 拓己

松井サービスコンサルティング ・サービスサイエンティスト

サービス改革の専門家として、業種を問わず数々の企業を支援。国や自治体の外部委員・アドバイザー、日本サービス大賞の選考委員、東京工業大学サービスイノベーションコース非常勤講師、サービス学会理事、サービス研究会のコーディネーター、企業の社外取締役、なども務める。           代表著書:日本の優れたサービス1―選ばれ続ける6つのポイント、日本の優れたサービス2―6つの壁を乗り越える変革力、サービスイノベーション実践論ーサービスモデルで考える7つの経営革新

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