変化する食卓とキッチンの風景

2011.08.23

営業・マーケティング

変化する食卓とキッチンの風景

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

市場は常に変化している。変化の波をどう乗り切るのか。食品の事例から考えてみる。

 個食化の時代。働き方が多様化すると共に子どもの塾通いなどが増加し、家族の生活サイクルがかみ合わないことが多くなり、1990年代頃から家族全員で食卓を囲む機会が減少したといわれている。家庭料理を代替したのがファストフードやコンビニエンスストアの食品だ。個食の進行で、家族が揃ったときでも各々が好みの食事をすることもアタリマエになり、大鍋を家族で囲むのではなく一人ひとりが好みの鍋を食べるという「銘々鍋」の風景も珍しくなくなってきたという。家族そのものがいない世帯も増加している。日本の世帯数は、単身世帯の増加によって2015年までは人口減少とは裏腹に増え続ける見込みである。食卓の風景を一変させる大きな要因だ。

 個食対応の食品はとにかく手間がかからないことが肝要だ。和食ファミリーレストラン事業と冷凍食品製造を展開するキンレイが、<火にかけるだけの具材付き冷凍麺「お水がいらない すき焼うどん」>を発売した。同商品のUSP(Unique Selling Proposition=独自の提供価値)は、<水を加える必要もなく、専門店のような本格的な味を楽しめるとのこと。「節電」「時短」商品としてもおすすめ>(マイライフ手帳@ニュース)だという。

 家庭の変化はキッチンの調理器具の風景も一変させている。インターネット調査のマイボイスコムの調べによると、「電気ポット」所有率は40.2%。「電気ケトル」所有率は19.0%だという。つまり、4割以上の家庭が「お湯を沸かす専用調理器がない」のである。鍋で沸かすのかといえば、カップに水を入れてレンジでチンして沸かす派も多いのだ。

 使用調理器の変化に対応して、カップ麺の最大手・日清商品は「冷凍 日清 太麺堂々 辛味噌ラーメン」を発売した。
1971年、日本マクドナルドと同じ年に誕生したカップ麺のパイオニアブランドであるカップヌードルを持つ同社にとっては由々しき事態である。かつてはアーノルド・シュワルツネッガーが筋骨隆々肉体にヤカンを2つ持って体操を披露するCMが一世を風靡したが、そのヤカン自体が家庭から消えているのだ。
 市場の変化を狙って様々な企業が「チンする麺」を上市し、従来型のお湯を注ぐカップ麺の代替品としてシェアを切り取っていく。前出のキンレイも「お湯を加えてレンジでチンするだけで出来上がる」という「チンして食べてね!もっちり太麺の豚骨醤油らーめん」などのシリーズも発売している。売り切れが相次ぎ、話題となった日清食品の「カップヌードルごはん」も市場の変化に対応し、「電子レンジ対応商品」を開発するために誕生したと同社はホームページの開発秘話で明かしている。まずは「ごはん」で先行し、完璧を期して「ヌードル」に移行するというシナリオが見て取れる。「太麺堂々」は電子レンジ対応カップ麺でも牙城を築くための負けられない先兵なのである。
 進む個食化と簡便化によって変化する食卓とキッチンの風景。そこで生き残るためのキーワードは何か。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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