どこでも太陽電池 - 三菱化学

2011.07.02

経営・マネジメント

どこでも太陽電池 - 三菱化学

中ノ森 清訓
株式会社 戦略調達 代表取締役社長

インクのように塗り加熱することで太陽電池とすることができる半導体材料につき、三菱化学が2012年の実用化の目処をつけた。 色々な用途が考えられそうで、夢が膨らむ材料だ。

三菱化学が次世代太陽電池として実用化が待たれている有機薄膜太陽電池において、世界最高値となる9.2%のエネルギー変換効率を達成した。

同社によると、これまでの有機薄膜太陽電池の最高値だった8%台で、それを一気に1%も向上させることができたことになる。同社は、エネルギー変換効率を10%にできれば実用化に踏み切れると考えており、今回の成功により2012年にはこの有機薄膜太陽電池を実用化できる見通しという。

この有機系の太陽電池は、現在、普及している無機系の結晶シリコン太陽電池に比べ低価格、安定調達が見込まれている。結晶シリコン太陽電池は原料に高純度シリコンを使っており、日本の場合、その調達を中国からの輸入に全面的に頼っている。一方で、三菱化学が研究開発を進めている有機薄膜太陽電池は、入手しやすい原料を使っており、従来の結晶シリコン太陽電池に比べて、生産コストや原料調達リスクを低く抑えられる。

同社が開発を進めているもう一つの特徴は、印刷技術が利用可能な製造方法という点だ。有機薄膜太陽電池の製造方法としては、大掛かりな製造装置が必要な真空蒸着法が主流とされていたが、同社の製法では、フィルム基板などに印刷して簡単に製造できる。製造装置も比較的小さなもので済み、低コストでの大量生産が可能になる。真空蒸着法では難しかった大面積化も容易だという。

この製法を可能にしたのが、同社が開発した有機半導体材料だ。この材料は結晶化前の前駆体の段階では有機溶媒に溶かしてインク状にすることができる。それをフィルム基板に塗布して加熱すると、この半導体材料が結晶化し、太陽光電池に適した薄膜の半導体特性を持つ。

こうしてできた同社の有機薄膜太陽電池は、薄く、軽く、曲げられるという特徴を持つため、応用範囲が広く、様々なデザインに加工できる。たとえば、同社では「屋根だけでなく、自動車のボディ、家の壁面や部屋の壁紙、カーテンで発電する」といった用途を考えている。

同社によると、衣服でも太陽光発電ができるようになるとのことで、正しく、日のあたる所であれば何でもどこでも太陽電池とすることができるという位の勢いだ。製品に塗るだけなので製品重量も嵩まない。よって、性能だけでなく、物流面でも環境経営を材料として非常に面白いものである。

材料メーカが非常に魅力的な素材を提案してきた。我われが次に問われるのは、こうしたユニークな材料を前にして、どの様に魅力的な製品、サービス、事業を作れるかだ。「どこでも太陽電池」とでも言うべきこの素材なら、色々なことができる気がする。(参考:2011年6月20日 日経ビジネスONLINE 山田久美「日本キラピカ大作戦」)

中ノ森 清訓/株式会社 戦略調達 代表取締役社長

調達・購買業務に関わる代行・アウトソーシング、システム導入、コンサルティングを通じて、お客様の「最善の調達・購買」を実現することにより、調達・購買コスト、物流費用、経費削減を支援する傍ら、日本における調達・購買業務とそのマネジメントの確立に向け、それらの理論化、体系化を行なっている。コーポレートサイト: http://www.samuraisourcing.com/

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中ノ森 清訓

株式会社 戦略調達 代表取締役社長

コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供していきます

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