事業の本質とコーポレート・カルチャー

企業経営にもっとも大切なもの、それは「カルチャー」である。カルチャーとは、長い年月をかけて、起業家自身の個性が昇華した姿である。

大企業であれベンチャー企業であれ、当然のことながら全ての企業は事業を行っています。それでは、そもそも「事業」とは、どのように生成し、発展していくものなのでしょうか。

私たちは、日頃から非常に多くのベンチャー企業、それも創業期のベンチャーと接しています。一つとして、同じ事業はありません。千差万別、それぞれが目的を持ち、個性豊かで特徴があります。

投資会社から投資を受けるような会社であれば、なお一層個性的な会社が多いのではないかと思います。優れたベンチャーであればあるほど、一種独特な、他に類を見ない、特別な何かを感じさせます。

その「特別さ」や「個性」とは、一体何に由来するのでしょうか。

技術でしょうか、サービスでしょうか、それともビジネスモデルなのか、仕組みなのか。一つの企業を圧倒的に独創的な存在へと駆り立てるもの、その根本は一体どこにあるのでしょうか。

今では時価総額2兆円にもなろうとする、戦後日本が生んだ代表的なベンチャー企業の創業者は、企業経営に最も大切なもの、それは「カルチャー」であると言っています。

つまり、「事業」を特別な高みへともたらすものは、技術でもサービスでもビジネスモデルでもなく、それを行う企業の「文化」にこそあると言うのです。

そしてそう言った直後に、自分の胸に人差し指をあて、次のように語りました。「カルチャーとは自分自身、つまり、起業家自身のことである」と。

オーナー経営の弊害が言われる今日には驚くべき発言と思われるかもしれません。しかし、冷静に、虚心に企業の生成発展を見つめるのなら、この発言が事実であることに気付くはずです。この巨大な起業家に、私は独立する前後の数年間、何度もお会いし、直接お話しをお聞きする幸運に恵まれました。今では社員数万人を擁する大企業ですが、その会社の事業の内容と目的は、正々堂々と生きてこられた、まさにその起業家の個性そのものでした。

先日、日経新聞で宮城まり子さんの『私の履歴書』を読んでいたら、「伊藤忠兵衛」なる人物が登場してきました。誰もが知っている、伊藤忠商事という大企業の創業家です。当たり前ではありますが、松下幸之助は松下電器産業の創業者であり、本田宗一郎はホンダ技研の創業者であり、豊田喜一郎はトヨタ自動車の創業者です。もちろん、国内だけの話しではありません。マイケル・デル、スティーブ・ジョブズ、ビル・ゲイツ、皆同様です。そして、私たちが日々接している小さなベンチャー企業も、全く同様なのです。

事業とは、つまりは起業家の個性のことであり、その結晶こそが一つの企業だということです。

そして、真に偉大な、歴史に名を刻むほどの、文字通りビジョナリーな企業とは、一人の起業家の個性が、「文化」と呼び得る高みにまで到達した姿なのだと思います。

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