電気製品の安全基準緩和で我々に求められるコペルニクス的転回

2011.06.07

経営・マネジメント

電気製品の安全基準緩和で我々に求められるコペルニクス的転回

中ノ森 清訓
株式会社 戦略調達 代表取締役社長

経済産業省が個別の電気製品の構造や材料を細かく定めた安全基準を大幅に簡素化する。この改正が目指す所は、国が製品の設計、仕様まで規制する方法から、最低限遵守すべき性能(結果)のみを規定する方向に転換するという、正にコペルニクス的転回とでもいうべき変更だ。この方針変更が変化を迫るのは売り手企業だけではない。企業であれ消費者であれこれら製品のすべての買い手にも変化が求めらている。

基本的には、この方針転換により、日本企業の製品開発の自由度、機動性が高まり、独創的な製品開発をより低コストでできることが見込めるため、望ましいものである。しかし、懸念されるのは、今まで行政の指導に従い、あまり考えること、リスクを取ることなしに製品開発を行ってきた企業が、いきなり自由に考えろ、行動しろと言われて、この機会を上手く行かせるだろうかという点だ。企業側から、「『発火しない』『使用者の年齢に考慮する』といった抽象的な基準では怖くて身動きが取れない。国としての基準を示してくれ。」という声が上がり、転換がなかなか進まず、元に戻ってしまう可能性は少なくないのではないかと思われる。

自由には自己管理の責任が伴い、与えられるものではなく、勝ち取るものだ。企業がこの安全基準緩和の恩恵を得るには、新素材、新技術、斬新な発想での設計などの挑戦が必要だ。その過程で、新しい取り組みに不慣れであったり、評価ノウハウ不足であったりして、数多くの失敗、痛い目を見るかもしれない。それでも、こうした挑戦を続けなければ、評価・管理ノウハウは蓄積されず、独創性、コスト競争力の観点から、海外市場では競争の土俵にすら上がれないということになりかねない。

ノウハウというのは、自分で考え、挑戦し、時には痛い目を見て、それらを克服して初めて身についていくものだ。独創性とコスト競争力の追求、しかもこれらの海外市場での実現というのが、これからの日本企業の競争、生存の軸になることは間違いない。各企業が新しく課せられた責任を恐がることなく、この機会に果敢に挑戦していくことを望む。

この安全性の管理の方針変更が変化を迫るのは売り手企業だけではない。企業であれ消費者であれこれら製品のすべての買い手にも変化が求められる。製品の安全性の管理が、国が設計や仕様といったやり方を細かく指導する方法から、最低限遵守すべき性能といった結果のみを規定する方向に変わるということは、今後、売り手企業の安全性管理に大きく差が出てくることが予想される。つまり、売り手企業だけでなく、企業であれ消費者であれ、買い手も売り手企業の安全性についての管理能力を評価する目を持たなければいけなくなる。

この移行がすんなり進むとは思わない。しかし、それは、買い手の売り手企業の評価能力を高めることになり、長期的には本当に力のある売り手企業が評価される、そうした市場に日本市場が成長していくことにつながると考えられる。市場がこうした方向に成長することは、より独創的かつより品質の良い製品をより安価に提供できる企業が生き残ることになり、長期的には企業、消費者の何れの買い手にとってもメリットの方が大きい。この過程で事故が起こることもあるだろうが、事故を起こした企業にペナルティを求めることはあっても、行政に手取り足取り面倒みてもらう社会を求めることなく、この変化をサポートしていこうではないか。

中ノ森 清訓/株式会社 戦略調達 代表取締役社長

調達・購買業務に関わる代行・アウトソーシング、システム導入、コンサルティングを通じて、お客様の「最善の調達・購買」を実現することにより、調達・購買コスト、物流費用、経費削減を支援する傍ら、日本における調達・購買業務とそのマネジメントの確立に向け、それらの理論化、体系化を行なっている。
コーポレートサイト: http://www.samuraisourcing.com/

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中ノ森 清訓

株式会社 戦略調達 代表取締役社長

コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供していきます

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