【仮説】若者の就職難や早期退社の原因

2011.05.17

組織・人材

【仮説】若者の就職難や早期退社の原因

川口 雅裕
組織人事研究者 /NPO法人「老いの工学研究所」理事長/一般社団法人「人と組織の活性化研究会」世話人

就職活動の厳しさ、若者の早期退職について、彼らでなく、自分達に視点を向ければ、どう考えられるか。

ライフネット生命保険が、先ごろ発表した調査結果は、なかなか興味深いものがありました。20歳代から40歳代の職業を持つ人に、「自身の新人時代は、楽しかったか?」と質問をしたところ、20歳代は34.7%、30歳代は41.0%、40歳代は52.1%が「楽しかった」と答えたそうです。

逆に、「苦しかった」と回答したのは、20歳代は46.7%、30歳代は38.9%、40歳代は27.8%であったということです。“3年以内に35%”と言われるように、新規採用者が早いうちに退職してしまう割合が、どんどん上がっているわけですが、これが裏付けられるようなデータと言えます。

このデータは、二つの見方が可能です。一つは、若い人達に甘やかされてきた人が増えている、あるいは能力が低くなってきているから、昔と同じような環境なのに「苦しい」と感じやすくなってきているのだという見方。もう一つは、新人にとってだけではなく、会社や仕事が昔に比べてどんどん楽しくなくなってきている、誰にとっても苦しくなってきている、という見方です。

前者は、会社や組織は変わっていないのに、若者がダメになってきていると考え、後者は、若者が早く辞めてしまうのは彼らのせいではなく、会社や組織が劣化したせいだと考える立場です。若手に視点を向けるか、自分達に視点を向けるか、の違いとも言えます。

現実には両方とも当たっている部分があるのだろうと思いますが、前者の立場をとって、若者の意識や能力の低さを問題視する人や組織が多いことは間違いありません。能力不足による不出来、ちょっとした失敗にすぐにめげてしまう様子などを見て、新人達をもっと理解し、上手に会話をし、うまく指導するスキルを身につけようという努力は多くの企業でなされてきましたが、後者の立場をとって組織開発に対して正面から取り組む動きは目立ちません。会話が少なく、失敗が許されない雰囲気で、将来や夢の見えない職場にいたら、普通は居心地が悪く、苦しいと感じるのは当然だ、それは自分達も同じだと考えて組織開発を進めるような試みは少数にとどまっています。

後者の立場は、取りにくいからでしょう。なぜなら、自分達も新人と同じように楽しくない、同じように苦しいのであれば、「若手と違って、自分達は辞めることができないのだ。」となりかねません。「同じような苦しさに対して、若手は自分に正直に逃げ出しているが、私達はソロバンをはじいた上で、自分の気持ちをごまかし、紛らわすことしかできない」ということを認めなければならなくなる可能性があります。

さらに、若者の就職難や3年以内の早期退職は、辞めたくても辞められない自分達に問題があることが分ってしまうかもしれません。若者が就職できないのも、早期退職してしまうのも、その根っこにあるのは、幹部・管理職を含めた上の階層の平均的処遇が厚すぎる(処遇に見合う人は当然いるわけですが)こと、その処遇に見合わない人に辞めるだけの力や意識がないことだ、ということがはっきりとしてしまうからです。

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川口 雅裕

組織人事研究者 /NPO法人「老いの工学研究所」理事長/一般社団法人「人と組織の活性化研究会」世話人

組織人事関連(組織開発・人材育成・人事マネジメント・働き方改革・健康経営など)や、高齢者・高齢社会をテーマとした講演を行っています。

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