ミニストップに学ぶ「震災対応」と「商売」の両立とは?

2011.03.30

営業・マーケティング

ミニストップに学ぶ「震災対応」と「商売」の両立とは?

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 3月28日付・日本経済新聞にわずか40行の小さなベタ記事が掲載された。タイトルは「ミニストップが独自の品薄対策 牛乳やおにぎり」。東日本大震災に対応した対策ではあるが、実はそれは同社が以前から構築してきた体制があってのことであるのだ。

 ミニストップの創業以来の差別化ポイントと、さらに昨年9月からの「手作りおにぎり」強化という下地があってこそ、今回の「震災品薄対応」が可能となっているのである。
 では、競合、例えば全国に約13,000店舗を持つ業界第1位のセブンイレブンが同様な施策を展開しようとすればできるのか。恐らく、それは「できない」だろう。そこが、ミニストップにとっては「震災対応」として社会・顧客に貢献しつつ、競合優位を築けているポイントなのだ。

 セブンイレブンの力の源泉の1つは、「サプライチェーンマネジメント(SCM)」の精緻さだ。自社のバリューチェーンに他社のバリューチェーンをつなげば、業界に拡大したサプライチェーンを描くことができる。サプライチェーンの中で、自社のバリューチェーンをできるだけ軽くして、高効率な「ジャストインタイム」を実現してきたのがセブンイレブンだ。ある意味、ミニストップとは正反対の姿である。確かにセブンイレブンでも店内調理は行っているが、ミニストップには一日の長、ノウハウの蓄積があるのである。

 ミニストップが被災地では他社から品薄の牛乳を仕入れたり、首都圏で食品工場が計画停電などで供給不足になっているおにぎりを手作りしたりと、素早い対応を行ったことは確かに社会的にもすばらしいことだ。しかし、そこには市場のニーズという外部環境を読み、競合と自社の強み・弱みを見極めて商機を見つけて展開しているという側面もあるのである。
 震災復興は恐らく長期戦になるだろう。便乗や過度な儲け主義は厳に戒められるべきであるが、長きにわたる期間を善意や社会的意義だけで乗り切ることはできないのも事実だ。その意味では、ミニストップの今回の対応は1つのケーススタディーとして学ぶべきであろう。

続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。

Ads by Google

この記事が気に入ったらいいね!しよう
INSIGHT NOW!の最新記事をお届けします

金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

フォロー フォローして金森 努の新着記事を受け取る

一歩先を行く最新ビジネス記事を受け取る

ログイン

この機能をご利用いただくにはログインが必要です。

ご登録いただいたメールアドレス、パスワードを入力してログインしてください。

パスワードをお忘れの方

フェイスブックのアカウントでもログインできます。

INSIGHT NOW!のご利用規約プライバシーポリシーーが適用されます。
INSIGHT NOW!が無断でタイムラインに投稿することはありません。