「リーガル」のアンチエイジング戦略から学ぶべきもの

2011.03.17

営業・マーケティング

「リーガル」のアンチエイジング戦略から学ぶべきもの

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 靴の「リーガル」ブランドを運営するリーガルコーポレーションが若年層ターゲットの新店舗をオープンした。そこに隠された狙いから学んでみよう。

 「ミルクシーフードヌードル」はネット上での口コミを拾い上げて開発されたが、「顧客の声」はどこで聴けるのかということも問題となる。
 その点、「リーガル・シュー・アンドカンパニー」の展開は英断であった。記事によれば、「当初は商品開発のみで既存店への供給を想定した。だが“若者の最先端トレンドを探るためにも独自店舗が不可欠”」と担当役員が判断し、新業態店の出店にこぎ着けたとある。

 2009年に発売されて大ヒットした、ロッテのガム「Fit’s(フィッツ)」の事例でも同じことがいえる。
 チューイングガム市場で60%のシェアを持つロッテにとっての悩みは、2002年を境にガムの消費量が右肩下がりしていることである。原因は「若者のガム離れ」。咀嚼能力の低下と共に、「ガムを噛む」という習慣がなくなり、「固い噛み心地」が敬遠されるようになったのだ。そこで開発されたのが「噛むとフニャン」という「柔らかな噛み心地のFit’s」である。しかし、ガムから離れ、自分たちが用いるものという認識が希薄になっている層に「柔らかなガムができました!」と訴求しても、ガム売り場の前で足を止めることはない。そこで、ロッテはまず、パパイヤ鈴木が振り付け、佐藤健と佐々木希が踊る「Fit’sダンス」を大々的に広め、注目を集めることにしたのだ。

 このことは、ガムの例だけではなく、それが書籍でも、靴でも同じことだ。
 例えばあなたにとって、とても有用な医学書があったとしよう。しかし、そもそも医学に興味がなければ、そのコーナーに足を向け、本を手に取ることはないはずだ。
 リーガルの従来店は「40~50代のための店」というパーセプション(認識)が市場に出できあがっているとすれば、そこに若者にとって魅力的な商品が陳列されていたとしても、そもそも店に入ってこない。若年層の取り込みも、その声を収集することもできないのだ。

 同店では、「2人の常駐スタッフはローテーションで数日ごとに入れ替え。販売の担当者だけでなく、企画や営業、デザイナーなども接客に当たっている」と、全社横断で顧客の声を拾う取り組み流されていることが記事で伝えられている。

 マーケティングとは「売れ続けるしくみ作り」である。
 「売れ続ける」ためには、「顧客は誰か」を常に見て、「理想的なターゲット顧客像」を明確にすること。その顧客の「ニーズ」は何か、「買う理由(Key Buying Factor=KBF)」は何かを拾い続ける必要がある。そして、そのためには「自ら顧客に近づいていくこと」が欠かせないのである。
 「ロングセラー商品」や「定番ブランド」とは、不動の存在ではない。自ら代謝を高め、古くならないように「アンチエイジング」の努力を欠かさなかったものに与えられる、結果としての称号なのだ。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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