歴史に学ぶ、リーダーがしてはならないこと

2011.02.21

ライフ・ソーシャル

歴史に学ぶ、リーダーがしてはならないこと

増沢 隆太
株式会社RMロンドンパートナーズ  東北大学特任教授/人事コンサルタント

リーダーとは、組織を統率することがその役割です。その組織が大きくなればなるほど、統率がキレイ事だけでは済まないことは、管理者、指導者であれば理解していなければなりません。

民主党候補者すべてに、選挙情勢の強弱関係無しに均等な選挙資金を配分したといわれる岡田氏は、「寝技」と呼ばれる水面下での野党折衝等が嫌いだそうです。
政治家として間違っていないと思いますし、議員としても正しい行動規範だと思います。しかしリーダーは「正しいだけ」は務まりません。学級委員長ではないのです。不平等だと批判されても、現実の世界で、きれい事だけでは済まない役割を担わなければならない、そんな重責をになうのがリーダーである政党指導者でしょう。

リーダーは、正しいことをするのが役割なのではなく、組織を統率することこそその役割です。組織構成員の気持をつかむことが出来なければ、組織は成り立ちません。
今回のように軽んじていた構成員も、離反されては組織維持が出来ないのです。16人のグループは、「これまで何度も党運営やマニュフェスト実行への提言をしても、一切耳を貸さなかった」という執行部への不満によって生まれてしまったのです。
権力をもって黙殺するのではなく、「皆さんの存在を軽んじるかのような態度を取ってすまなかった」と詫びるという選択はなかったのでしょうか。

負けた者、弱い者には逃げ道や思いやりをもつことは、倫理観や美意識だけから推奨されるものではありません。
北条氏を倒し、建武の新政を実現した後醍醐天皇は、公家一統という貴族による治世実現を目指しました。しかし北条氏討伐に功のあった赤松円心には、貴族に比べほとんど恩賞が与えられませんでした。
このような扱いは後醍醐天皇の建武の新政に対する武士の不満を呼び、遂には足利尊氏を統領とする武士により瓦解します。
楠木正成、新田義貞の奮戦空しく、後醍醐帝は政権を追われ、尊氏が押立てた光厳上皇、光明天皇による北朝と室町幕府への基礎が確立されていきました。
この戦いで尊氏を強力に補佐した有力な一人が赤松円心なのでした。後醍醐帝から粗雑な扱いを受けた時、尊氏だけは「赤松殿の奮戦を忘れません」と言っていた、その一言で円心は「主とするならこの方」と決めたと言います。カネをばらまかずとも、言葉一つで人を動かせたのが足利尊氏だったのです。

人間、威勢の良い時、上り調子の時はいかようにも周囲はもてはやしてくれます。しかし、困った時、落ち目の時こそ真の人の心がわかるもの。足利尊氏は「武家の頭領」に、成るべくして成ったのです。それはリーダーとして、人心を確実に掌握する能力と、その実利的な効能を果たせたからなのです。

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増沢 隆太

株式会社RMロンドンパートナーズ  東北大学特任教授/人事コンサルタント

芸能人から政治家まで、話題の謝罪会見のたびにテレビや新聞で、謝罪の専門家と呼ばれコメントしていますが、実はコミュニケーション専門家であり、人と組織の課題に取組むコンサルタントで大学教授です。 謝罪に限らず、企業や団体組織のあらゆる危機管理や危機対応コミュニケーションについて語っていきます。特に最近はハラスメント研修や講演で、民間企業だけでなく巨大官公庁などまで、幅広く呼ばれています。 大学や企業でコミュニケーション、キャリアに関する講演や個人カウンセリングも行っています。

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