青山の自転車通勤スーツに学ぶターゲティングとキャラ立ち

2011.02.13

営業・マーケティング

青山の自転車通勤スーツに学ぶターゲティングとキャラ立ち

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 紳士服チェーンの青山商事が「自転車通勤向けスーツ」を発売した。その狙いは何だろうか?

 ブームからすっかり定着した感のある「自転車通勤」。「ジテツウ」という呼び名も生まれているが、省略されるのはそれだけ口の端に上っているということを意味している。国土交通省も「都市交通における自転車利用のあり方に関する研究(2005年)」以来、交通分担率の向上を目指す方針を打ち出している。政府の動きだけでなく、不況を背景とした節約志向や、健康志向の高まりや、朝活、残業縮小という趣味時間の拡大などの社会的背景も後押ししている。さらに寡占化した部品メーカーが規模の経済を活かして低価格化が進むなどの要素も加わって、スポーツタイプの自転車価格は一昔前より驚くほど低価格化している。

 青山商事の「自転車通勤向けスーツ」は上記のようなマクロ環境を背景とした狙いであることは間違いない。では、2月11日付・日経MJに掲載された記事から商品の詳細を見てみよう。商品名は「アクティブモバイル」という。「ジテツウ」にピッタリのネーミングだといえるだろう。仕様は「背広とパンツの全体の表地に伸縮性」はアタリマエとして、その上で「背中、袖、ヒザの部分の裏地には特に伸縮性が高い裏地を採用した」という点が出色である。
 注目すべくは価格だ。49,800円(スペアパンツ付き59,800円)。2プライス、19,800円か29,800円で若年層向けデザインのスーツが色々と選べるイマドキの価格としては強気なプライシングであるといえるだろう。そのあたりから青山の戦略が見て取れる。

 記事によれば、「近年、大手紳士服店各社が打ち出すスーツの基本性能は“高伸縮性”や“自宅で洗濯可能”などを中心に一巡し、目新しさは薄れつつある」とある。その中で、「若年層向け高伸縮性スーツは競合他社も展開しているが、青山はあえて特定用途を打ち出し、差異化につなげる構え」という狙いだという。

 競合との差別化して獲得したいのは「若年層」であるが、その中で特に狙っているのはどんなターゲットだろうか。ターゲットには大きく2つの種類がある。ピラミッドを思い浮かべるとわかりやすいが、上部にあるのが「イメージターゲット(または、コミュニケーションターゲット)」。その下に広がるのが「ベースターゲット(または、ビジネスターゲット)」である。
 青山の自転車通勤ーツで考えれば、まずはジテツウ実践者を狙っているのは自明だ。張り切って高価な自転車も買った。ヘルメットやグローブ、バックパックも揃えた。しかし、意外と困るのがウェアなのだ。スーツのまま乗ると、何とも窮屈。かといって、現在の自転車通勤・オフィス環境では着替えもままならない。だとすれば、多少高くとも、自転車に乗るのにピッタリなスーツなら多少高くとも惜しくはない。
 ジテツウ実践者(自転車ツーキニストともいう)がターゲットとなるのは間違いないが、それだけではまだボリュームが少ない。規模の経済を効かせて原価を低減化するクリティカルマスに達しない恐れがある。そこで狙いたいのが、ベースターゲットとして、「オレもいつかはジテツウ!」と思っている層。または、「自転車に乗れるくらいなら、さぞやからだが動かしやすくて楽に違いない」と機能的なメリットを感じる、スーツを着て軽作業を行う事がある層だ。記事にも「スーツを着て行う運動として一般にイメージしやすい自転車を全面に打ち出し、機能性をわかりやすく伝える」とある。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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