ソフトバンクの「-÷×+」のマーケティング

2011.02.08

営業・マーケティング

ソフトバンクの「-÷×+」のマーケティング

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 ソフトバンクが「ボタン1個の携帯」を3月中旬から発売するという。(2月6日付・日本経済新聞)。記事の見出しには「子ども・高齢者の安全対策用 基本料、月490円」ともある。

 「ボタン1個」の形状と機能は携帯電話専門サイト「ケータイwatch」の記事に詳しい。
 <防犯ブザー付きのシンプル操作、「みまもりケータイ 005Z」>
 http://k-tai.impress.co.jp/docs/news/20101104_404260.html

 日経記事では高齢者向けともなっているが、同商品は社団法人全国子ども会連合会の推奨商品や日本PTA全国協議会の推薦商品にもなっているように、メインは子ども向けだ。となると、「キッズケータイ」で子ども向け携帯電話というカテゴリーを切り開いたdocomoや、防犯ベル機能起動時にセコムの警備員が急行するサービスを売りにしたauの「mamorino(マモリーノ)」とガチンコ勝負ということになる。だが、「ガチンコ」というよりは「肩すかし」ともいうべき「引き算」の勝負であることが機能面からわかる。

 まず、「ボタン1個」とは、押下によって保護者に電話がかかり、同時にGPSの位置情報をメールで通知するためのものだ。そして、発信先は特定の1番号に限定される。つまり、「ママとのホットライン」である。防犯ベル機能のストラップを引いた場合も、大音量の警報と共に位置情報が通知される。また、保護者から電話をかけた場合は子どもがボタンを押さなくとも自動受信し、周囲の音を拾って確認することができるという。機能は以上。極めてシンプルで、他キャリアにある電話やメールの機能や警備員の急行サービスなどは何もない。大胆なまでの「引き算」を行なった商品であるといえる。

 その「引き算」の「解」はどこから導き出されたのか。子どもの安全のために携帯を持たせたいと考える親は多い。しかし、躊躇して持たせていない親も多い。ソフトバンクはその「購買棄却理由」を分解、つまり「割り算」したのだ。

 購買棄却理由の1つは、「まだ小さくて操作できないだろう」という考え方だ。親の送り迎え完備の幼稚園時代と異なり、自分で通学するようになる小学1年生にとっては複数あるボタンや機能は使いこなせない。では、間違えのないまでのシンプルさにすれ解消できる。もう一方、「携帯はまだ早い!」という考えも少し大きくなった子どもを持つ親にはあるだろう。自由に通話やメール、あまつさえブラウジングまでさせたくないということだ。それに対して他キャリアは各種の機能制限をしているが、そもそもその機能をつけなければいいのだ。費用面も大きなネックだ。子どものための新規出費を抑制したいという意向は不景気の中、どうしても働く。では、機能を限定し基本料を抑えれば解消できる。
 
 「割り算」して「引き算」して導き出された「超・シンプルな機能」は万能ではない。「いくら何でも機能なさすぎるだろう」とか、「うちの子はもう大きいからもう少し複雑でも使える」とか、「親子で連絡を取り合うにももっと便利に使いたい」などの意向を持った親は取り込めなくなる。そこで、果たしてその「解」はそれでいいのかを「かけ算」で検算したはずだ。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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