パチンコになったアニメから、私たちは、何を学ぶべきか・・・。

2011.01.23

営業・マーケティング

パチンコになったアニメから、私たちは、何を学ぶべきか・・・。

中村 修治
有限会社ペーパーカンパニー 株式会社キナックスホールディングス 代表取締役

ピーク時には30兆円だったパチンコ市場は、衰退の一途を辿っている。貸金業法の改正により個人の借入総額は低く抑えられ、さらに中小ホールは淘汰されている。その衰退の陰で売上げを伸ばしているのは、パチンコ店と一心同体の遊技メーカーである。

ご覧のように、なんでもありの様相である。当然、版権争いは激しくなり、許諾料も高騰する。ものによっては10億円以上のものもあるという。有名なアニメなら1億円以上はあたりまえ。一流とは呼べない芸能人の方でも、版権料は数千万円。当然、この許諾料は、1台の販売費にのっかる。1台20万円~30万円と言われていた相場は、ここ数年で10万円以上アップしたと言われている。

遊技メーカーは、許諾されたキャラクターを使って、バンバンとテレビで煽る。当然、その機種を期待したユーザーが店頭に行く。そのサイクルに合わせるためには、パチンコ店は、高額の機種を次々に設置し、早期に回収しなくてはならない。中小のパチンコ店は、これに対応できない。大規模なパチンコ店だけが残っていく構造になる。

遊技メーカー最大手であるセガミホールディングスの2010年度の当期純利益は、202億円にのぼる。この強い財務基盤のある遊技機メーカーからの許諾料は、版権を保有している企業にとってはありがたい。テレビ局や出版社といった構造不況業種のメディアからおさらばして、アニメ制作会社や音楽会社や芸能事務所などがパチンコマネーを頼ることになる・・・。

しかし、よく考えていくと・・・「版権もの」が推し進めてしまっているパチンコ店の大規模店への寡占化は、いずれ、設置台数の減少とともに、その大規模店だけでサイクルできる台数に限界が生まれる。どの道、ネタ枯でジリ貧・・・自分たちの首を絞めることになりはしないだろうか。

そして、自分たちの首を絞めているのは、アニメ制作会社や音楽会社や芸能事務所も同じである。パチンコ1台あたりの1時間あたりの目標粗利は、1000円強と言われている。かつては、夢や正義を語っていたヒーローやヒロインが、リーチアクションの中で「次こそ、次こそ」とお金を吸い上げていくお手伝いをしているのである。「パチンコの台になったら、上がり」という感じが否めないのは、そういう価値の逆転感である。

「ドラゴンボール」の作者である鳥山明さんは、再三の版権使用交渉に対してこんな言葉を発しておられる。『私は自分のキャラクターが、パチンコという大人の賭博に使われるのが我慢ならないんですよ。漫画を大人の賭博に使って、お金のために誇りを捨てる人たちがたくさんいる』 と・・・。

遊技メーカーやパチンコ店が、安易にキャラクターを活用すること。アニメ制作会社や音楽会社や芸能事務所が、捨て身でパチンコマネーを頼ること。どちらも、お金のために誇りを捨てていることにならないだろうか。目の前の利益や獲物を狩ってきた結果が、現在である。「版権もの」による「夢や正義」の消費は、新しい市場を掘り起こしているどころか、パチンコ市場の衰退を、根っこから加速させている気がする。

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中村 修治

有限会社ペーパーカンパニー 株式会社キナックスホールディングス 代表取締役

昭和30年代後半、近江商人発祥の地で産まれる。立命館大学経済学部を卒業後、大手プロダクションへ入社。1994年に、企画会社ペーパーカンパニーを設立する。 その後、年間150本近い企画書を夜な夜な書く生活を続けるうちに覚醒。たくさんの広告代理店やたくさんの企業の皆様と酔狂な関係を築き、皆様のお陰を持ちまして、現在に至る。そんな「全身企画屋」である。

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