伊藤園「TULLY'Sブランド製品CM大攻勢」への道のり

2010.11.11

営業・マーケティング

伊藤園「TULLY'Sブランド製品CM大攻勢」への道のり

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 伊藤園がTULLY'S(タリーズ)コーヒーブランド商品のCMで大攻勢をかける予定のようだ。4月末までに6,000GRP。年間1万GRPとの計画もある。ざっくり言って、半年で1人60回、年間100回はそのCMを見ることになるほどの大攻勢だ。その戦略的な意図、そして、そこにいたるまでの道のりを考えてみよう。

 伊藤園が缶コーヒーにこだわるのは、稼ぎ頭であり、収益性がいいためだけではない。
 飲料メーカーだけではないが、メーカーの力の源泉の一つは「チャネル支配力」にある。つまり、「売り場をいかに確保するか」である。そして、特に飲料業界の場合、自動販売機の保有台数が販売力の雌雄を決する。日本には265万台の自動販売機が設置されている。(2006年度末時点:2007年12月16日日経新聞 ※総設置台数は統計によって誤差があるので注意)。そのうち、94万台がコカ・コーラの自販機だ。同社の力の源泉は自販機の力に負うところが大きい。利益率が薄くなるコンビニやスーパーなどの販路に頼らなくとも、自社で売り場が展開できる。設置さえすれば、自由に自社製品のラインナップを展開できることも魅力である。
 しかし、伊藤園には自販機に積極展開できない理由があった。同2006年度末時点で12万1000台に留まっている。自販機を展開するには、上記コカ・コーラのように並べるべき商品ラインナップが必要となる。伊藤園には強い炭酸の刺激がクセになる「天然水ソーダ」などもあるが、やはりイマイチマイナーな存在だ。ましてや、街ナカの自販機のユーザーは9割が男性で、売上げの半分は缶コーヒーが稼ぎ出しているという。缶コーヒー不在では自販機を設置しても画竜点睛を欠くことになる。その意味でも、時間がかかろうとも、「売れる缶コーヒーを作って育成すること」が大きな課題であったわけだ。それが、タリーズ買収から4年間をかけて達成しようとしているわけだ。

 売れる商品の目処が立ったら、いよいよ売り場拡大を急がなくてはならない。2009年10月6日の日経新聞に「伊藤園、大塚ベバレジ傘下の自販機運営会社に出資」という報道があった。14億円を投じたという、その狙いは伊藤園の商品を、大塚ベバレジ傘下の自販機運営会社の持つ3万台の自販機に入れることである。
 国内の自販機は飽和している。伊藤園は年間1万台の自販機をコンスタントに設置してきたが(2007年7月26日放送・日経スペシャル「ガイアの夜明け」)、<自販機の設置市場は成熟しており、設置台数は05年の228万台をピークに前年を下回り続けている。全国清涼飲料工業会(東京都中央区)によると「限られた新しい設置場所の奪い合いになっている」という。>(2010年8月24日神奈川新聞)。そんな環境で、一気に商品の販路である自販機を確保するために、多額の投資を決断したのだ。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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