「コンビニおでん70円均一」の謎を深掘りする

画像: TAKA@P.P.R.S

2010.11.09

営業・マーケティング

「コンビニおでん70円均一」の謎を深掘りする

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

冬の定番、「コンビニおでん」。昨今、各チェーンともお約束的に「70円均一」になっている。そのワケを日経新聞の関連記事をもとに深掘りして考察してみよう。

 しかし、上記11月3日の日経MJの記事には昨今の変調が記されている。<消費者の節約志向や他チェーンとの競合激化で、おでんの購入数量も1人当り4個程度で頭打ち感が出ている>という。
そこで、70円均一の1つの理由が考えられる。もちろん、前掲のコラム「数字すうじ」のように、コメントにある値引き合戦的な意味合いもあるが、「7個買ってワンコインというわかりやすさ」というコメントが最も正解に近いだろう。
 おでんにはネタがたくさんある。セブンイレブンのコメントでは大根が最強とのことだが、各社が魅力を出そうとすれば、限られたスペースの中で工夫して変わり種も取り込むこととなり、種類は増える。しかし、数が多くなれば人は結局無難ないつものものを選んでしまう。
 行動経済学・葛藤下の選択理論における「現状維持の法則」という。以前、放映されていた、プリンストン大学の行動経済学者・シャフィール博士が解説をする大和証券グループのCMを覚えている人もいるだろう。
 おでんの場合も数多いネタを目の前にして、迷ったあげく、結局、大根といくつかの定番ネタに落ち着く人も多いだろう。さらにネタごとに価格がバラバラだったら、支払総額の計算が面倒で、新しいものに手を出して「思ったより高く付いた!」ということになるリスクを回避しようという意識が働く。故に、「均一価格のわかりやすさ」が必要であり、「消費者に対するお得感」と「競合との価格比較」で「70円」という金額が決まり、「70円均一」にたどりついたのだと思われる。

 「70円均一」から一歩踏み出しているチェーンもある。サークルKサンクスだ。前出の11月3日日経MJコラムには「サークルKサンクス“チョイ足し” おでん、気軽に“自分流”」という見出しと、おでん売り場写真には「“チョイ足し”コーナーに並ぶ札から好きな商品を選ぶ」という説明が付いている。おでん鍋の前に8種類の札が設置されている。つゆに溶かして味を変える、スープ代わりにする「カレー」「チゲ」「とんこつ」「コラーゲン」の粉末スープ。具材として追加して主食機能を持たせる「おこげ」「焼き餅」「うどん」。人気の「ピリ辛練りラー油」も用意されている。
 記事によると、同社では<従来の70円~125円から80円と100円の2つの均一価格に見直した。計算しやすさを重視した取り組み>であるとし、70円ではないが、上記と同様に「現状維持の法則」を打破する狙いが見える。
 「チョイ足し」の展開は、購入数量を増やす「アップセリング」に加えて、「関連商品の購入」を意味する「クロスセリング」で収益の向上を図る狙いだ。クロスセリングをしつつ、飽きさせないために様々な具材を試させる。そのため、<表面に焦げ目を入れる焼き餅などは「通常は100円を超す商品」というが、あえて100円を切る90円に設定した>という。つまり、収益が低い、場合によっては赤字を覚悟で客を集める商品=「ロスリーダー」も設定しているのである。
 そうして注目させて、手に取らせたい客は誰か。同社の真の狙いは、前出の「おでんの購入数量1人当り4個程度で頭打ち」打開のため、「新規顧客を獲得すること」だという。どこでも同じような売り方。店内に漂う香り。味。それに対して「チョイ足し」で魅力を高め、「70円均一」から抜け出て「80円・100円均一」に賭けているのである。

 「コンビニおでん70円均一」の謎。それを掘り下げて考えると、その裏には「タスポ特需」に沸いた翌年の対前年比ダウン。11月からの大幅値上げという「タバコ依存」から抜け出ようと必死で工夫を重ねるコンビニチェーン各社の姿が見えるのである。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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