日本のアパレル業界の幸運は、成熟した市場を長期間独占できたことだろう。しかし、中国市場では経済成長と共に外資が押し寄せ、中国市場を中国企業が独占することを許さなかった。日本の「失われた10年」の間、中国は熾烈な競争と淘汰の10年を経験している。
5.ドメスティックとグローバル
日本アパレル企業は、豊かな国内市場を独占することで成長を遂げた。しかし、最近の日本ファッション市場は外資ブランドが次々に上陸し、日本アパレル企業の市場シェアは下がる一方である。そういう意味では、ドメスティック企業である日本アパレル企業が、既にグローバル化している中国市場で苦戦するのは当然なのかもしれない。
中国アパレル企業は、日本アパレル企業のように豊かな市場を長期間独占する幸運に恵まれなかった。市場が成長するにつれ、次々と世界中からファッションブランドが押し寄せた。国内アパレル市場が成熟する以前に、激しい競争と淘汰が起こったのである。
第一期のアパレル成功組は、改革開放による競合が本格化する前に、独占的にビジネスを展開し成功を収めた。裸一貫で他人より早く事業を開始し、人脈を駆使し、市場シェアを獲得していったのである。この種の企業経営者の多くは大学を卒業しておらず、小学校卒、中学校卒も珍しくない。
現在、成長しつつある企業の経営者は、大卒や海外留学の経験者も少なくない。今後の中国アパレル業界では、急激に世代交代が進むだろう。また、日本の経営者は国内で成長したために、国際的な人脈を持つ人が少ない。しかし、中国人経営者には華僑ネットワークがある。親戚や友人知人が世界中に点在し、常に連絡を取り合っている。そのネットワークを利用して、ヨーロッパに企画室を設置しているのだ。
日本アパレル企業の多くが、日本国内市場で育ったのに対し、中国アパレル企業の多くは海外との貿易ビジネスを経験している。中国の高級アパレル企業の多くは、ヨーロッパから素材を仕入れている。ヨーロッパのテキスタイルメーカーも直接中国アパレル企業のオフィスを訪問してビジネスをしている。中国の高級百貨店も、欧米のアパレル企業と直接付き合っている。最近では、欧米のファンドが中国のファッションビジネスに投資する例も増えている。資金調達の面でも国際化が進もうとしているのだ。
中国のファッション関係者は口を揃えて次のように語る。「中国市場は国際的に開放されている。日本企業だけでなく、中国市場では国際的な発想を持たないと成功することはできない」
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2009.02.10
2015.01.26