何でも“コンペ”にしたがる人の心理

2010.09.13

組織・人材

何でも“コンペ”にしたがる人の心理

川口 雅裕
組織人事研究者 /NPO法人「老いの工学研究所」理事長/一般社団法人「人と組織の活性化研究会」世話人

コンペにはメリットもあれば、デメリットもある。まるで常識か癖のように、何でもコンペにするような仕事の仕方で良いのだろうか。

民間同士の取引においても、様々な業界で「コンペ」が増えているようで、受注するにはほぼ全てがコンペだという業界も少なくないようです。小さな会社が受注するためには・・・という話ではなく、有名企業や大企業でもコンペに参加しなければいけないことが格段に増えています。コンペと言っても、実際には提案内容に大差なく、価格に焦点が当たった“あいみつ”(相見積り)みたいなものが多いと思いますが、なぜコンペが増えたのか、コンペにするのが当然だ、常識だと思っている人もしくは習慣や癖のようになっている人が増えたのかを考えてみたいと思います。

もちろん『コンペにする(競わせる)ことで、よりいいものが安く買える可能性が高くなる。』『色々と見ることで、騙される可能性が低くなる』ということもあるでしょう。まあ、それがコンペの大義名分です。しかし、他に本音(それが無意識であっても)があるように思います。

一つは、発注側担当者の勉強不足やイメージ不足。自分はどんなことをいくら位でやりたいのか、どのような理想形を描き、何を達成したいのか、が曖昧なまま仕事を進めようとしているので、色々な提案を見てみたくなる。その仕事に関する知識の蓄積や情報収集を怠っているので、色々な事例などをたくさん見て説明してもらわないと決められないという状態になります。つまり、仕事や課題に対する当事者意識や本気度が低下した結果として、コンペが増えたのではないか。

二つ目は、発注側担当者のアリバイづくり。ちゃんと比較検討したこと、どこかと特別な関係あるようなことはないことをコンペの実施によって証明したいという気持ちの表れです。本来の仕事の目的よりも、コンプライアンスの観点を優先してしまっている、成果を上げることよりもプロセスや手続きにおいて抜かりがないことを大切にしているような価値観とも言えるでしょう。さらに、コンペを通して、参加側にお金を払うことなく、様々な情報や知恵や役務を得ることができるということもあるかもしれません。

大切なことは、果たしてコンペが増えることによって、本当に安くていいものが買えるようになったかどうか。コンペにもデメリットがあることを、しっかり認識しているかどうかでしょう。

もし、安くていいものが買えるようになったとしても、コンペを企画・開催し、発注先を決定するのにかかる時間やパワーのロスが実はもっと大きいのではないか、深い相互理解と信頼関係を持つパートナーを失う(パートナーができない)ことになっていないのか、参加側がそれに費やすパワーやただ働きの多さに疲弊しきっていないか、そんな観点から考えてみる必要があるでしょう。昔より遥かに忙しくなったのに、利益が増えないのは価格下落が原因だと思いますが、価格の下げ圧力に加えてタダ働き要素の強いコンペが、実に普通の商慣行になってしまったことも多少影響をしているのではないでしょうか。

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川口 雅裕

組織人事研究者 /NPO法人「老いの工学研究所」理事長/一般社団法人「人と組織の活性化研究会」世話人

組織人事関連(組織開発・人材育成・人事マネジメント・働き方改革・健康経営など)や、高齢者・高齢社会をテーマとした講演を行っています。

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