“面白い”が起点――iPadの本質は好奇心にある

2010.09.10

経営・マネジメント

“面白い”が起点――iPadの本質は好奇心にある

ITmedia ビジネスオンライン
“ニュースを考える、ビジネスモデルを知る” ITmedia 編集部

「情熱の系譜」iPadアプリの仕掛け人、協和発酵キリン広報担当マネジャーの長谷川一英さんにインタビューした筆者。インタビュー後、iPadに保存されたスイス旅行の画像を肴にした語り合いをして、iPadの本質に気がついた。 [郷好文,Business Media 誠]

 「元気のある会社をアピールしたいんです」と長谷川さん。

 きっかけは協和発酵とキリンファーマの合併(2008年)。合併に先立ち、社員アンケートで「どんな会社にしたいか?」と聞くと、1位は「信頼・誠実」、2位は「躍動感」だった。同社はマジメな製薬会社、信頼はもちろんだが、“躍動”をどう表現すればいいか?

 長谷川さんは、自ら名刺のデザインやCI革新にも取り組んだ。「KYOWA KIRIN」のロゴを“元気の出る色”オレンジ色にして躍動を、フォントは太めにして信頼を表した。さらに「協和発酵=焼酎」「キリン=ビール」という一般イメージから脱却するため、テレビ番組の提供、iPadアプリというチャレンジを続ける。「新しいものに躊躇はしません」とにこやかに笑う。

 チャレンジは奏功した。制作を担当するビルコムには「番組クオリティは圧倒的にいい」という電話までかかる。iPadアプリも1万を超えるダウンロード数を達成。無料アプリ全体でも上位に入る。

 「iPadアプリが起点となって、TwitterやFacebookでどんどん語られていくようにしたいんです」

 そう話すのは、ビルコムの早川くららプロジェクトマネジャー。テレビ番組やYouTubeは面をとる(大衆をつかむ)、iPadはTwitterなど参加型サイトと連携して話題を広げ深めるものと分析していた。

 「『情熱の系譜』というコンテンツがiPadでみんなに広がる」のも「『スイス旅行 on iPad』で語り合う」のも本質は同じだ。そこにあるのは“iPadサイクル”である。



iPadはコンピュータ?


 「iPadとは何か?」が私の目下のテーマ。インタビューと前後して「iPadマーケティングを考える」という講演を都内で行った。暑いさなかに熱く語った講演は「iPadとは何なのか?」という問いかけからスタートした。

 例えで示したのが“iPad=システム手帳説”。システム手帳のカバーはiPad本体、シートや切り抜き、地下鉄路線図や名刺入れなどのリフィルがアプリということだ。一定のフォーマットの範囲でコンテンツを自由に選べて、中身もその順序も自由に入れ替えられるのも似ている。

 ここが「起動し作業して終了する」PCのような目的志向のデバイスとは根本的に違うところ。iPadはタッチして何かをして、誰かとつながって、ポンとOFFする。PCは作業デバイス、iPadは生活デバイスである。その核心を「ストック=エディット=ポスト」という“iPadサイクル”で表現した。

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