訃報にふれて。 ラッシャー木村という生き方

2010.05.27

ライフ・ソーシャル

訃報にふれて。 ラッシャー木村という生き方

増沢 隆太
株式会社RMロンドンパートナーズ  東北大学特任教授/人事コンサルタント

プロレスラー、ラッシャー木村さんが亡くなりました。馬場、猪木という超スターの陰でダントツに離された3番手のポジションを生きた男の姿。組織の、キャリアの道が、決して「表」だけでないことを教えてくれました。

当時単に地味なおっさんレスラーに見えたラッシャー木村選手ですが、ただのさえないおっさんではありません。確実に人を引き付ける魅力が会ったから、団体のエースを務められたのです。
少ないものの、国際プロレスファンは今でもいます。数年前に発売された、テレビ東京の国際プロレスアワーのDVD、もちろん買いました。当時ビデオが無い時代でした。

結局国際プロレスは倒産してしまいました。残ったラッシャー木村、アニマル浜口、寺西勇らは、「新国際軍団」と称して、猪木の新日本プロレスに「殴りこみ」というストーリーを演じました。結果待っていたのは、大スター猪木の天敵、大悪役という役回りです。
プロレスの興行性から避けられないことだったと、今は納得できます。しかし当時はなぜ、こんな理不尽な役回りを諾々と演じるのだろうと言うファンとしてのもどかしさを感じました。

しかしラッシャー木村という人は、「職人」の誇りを持っていたのです。猪木の得意技、ナックルパンチ(一応プロレスでは反則なんですけど・・・)が何十発も木村の額を撃ちつけます。しかし木村はジリジリと後退はするものの倒れません。さすがに撃ち疲れ、手が止まった猪木の頭を捕まえ、木村は頭突きを一発かまします。
たった一発の頭突きで猪木は引っくり返りました。

私は震えました。「この一発」のため、ラッシャー木村という人はいるのだなと思いました。試合は一方的にその後猪木に押されて、不本意な反則勝ちで木村勝利となりますが、プロレスに勝敗は関係ありません。後半一方的に攻めまくった猪木の圧勝と言う評価が、当然圧倒的多数を占める猪木ファンによって下されました。

しかし私はその勝敗には何も感じませんでした。ラッシャー木村という「生き方」があることを学んだのでしょう。「わかる人はわかってくれる」こんな思いは組織人として生きる上で欠かせない励みだと思います。
ラッシャー木村選手と言えば、全盛期、そのブ厚い胸板と、ボディビル無縁のナチュラルな筋肉が、さすがの猪木ファンからも賞賛されていました。その背中が、私に、組織って、社会って、こんなこともあるんだと教えてくれたのでした。
「ありがとうプロレス。さようならプロレス」アニマル浜口選手が、“ああ”なる前に残した言葉です。

その人柄同様、一言も残すことなく逝かれたラッシャー木村選手にも、「ありがとうございました」と伝えたいと思います。

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増沢 隆太

株式会社RMロンドンパートナーズ  東北大学特任教授/人事コンサルタント

芸能人から政治家まで、話題の謝罪会見のたびにテレビや新聞で、謝罪の専門家と呼ばれコメントしていますが、実はコミュニケーション専門家であり、人と組織の課題に取組むコンサルタントで大学教授です。 謝罪に限らず、企業や団体組織のあらゆる危機管理や危機対応コミュニケーションについて語っていきます。特に最近はハラスメント研修や講演で、民間企業だけでなく巨大官公庁などまで、幅広く呼ばれています。 大学や企業でコミュニケーション、キャリアに関する講演や個人カウンセリングも行っています。

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