ヒットするか?「大人のキリンレモン」と「キリンプラス-アイ」

2010.04.06

営業・マーケティング

ヒットするか?「大人のキリンレモン」と「キリンプラス-アイ」

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 夏場に向けてこれから激しさを増す清涼飲料市場。その主戦場は「炭酸」「ゼロカロリー」となることは、昨今のトレンドから想像に難くない。その激戦地に明日・4月6日に参戦するのはサイダーの老舗ブランド「キリンレモン」の派生ブランドだ。大ヒットとなるか?その課題は何だろうか?

 では、無事に「大人の」という訴求が無理なく展開できるようになったわけだが、「大人のキリンレモン」がヒット商品になるためにはどのような課題があるのだろうか。

 Product(製品)としては、カロリーがゼロかは定かではないが、糖類はゼロのようだ。しかし、ゼロというより眼目は<大人にうれしい健康成分「回復系アミノ酸オルニチン」「クエン酸」「ビタミンB6」を配合>(同社ニュースリリース)というところだろう。「ゼロで太らない」よりも「健康になれる炭酸」というのはUSP(Unique Selling Proposition:独自の売りのポイント)なのだ。「大人の」と「健康」がうまく結びつけば、ターゲットには魅力的になるかもしれない。その認知・理解が得られるかがキモだ。
少し気になるのが、<パッケージは、従来の炭酸飲料とは対照的に、落ち着いた大人向けのデザインに仕上げ、白ラベルと明朝体ロゴを使用することで、品質感を表現>(同)というところだ。「三ツ矢サイダーオールゼロ」は「三ツ矢サイダー」と極めて近いパッケージデザインで、両商品が店頭で並ぶと面展開が広がるメリットがある。キリンレモンブランドの商品と認知されにくいと思われるため、独自に複数フェイスを確保することが欠かせなくなる。

 ヒットのための一つの課題はPlace(販売チャネル)であることは間違いない。キリンビバレッジの自販機保有台数は20万台と23万台のアサヒ飲料に大きく劣後するものではない。しかし、自販機のリーダー企業である日本コカ・コーラの98万台などと比べれば、コンビニチャネルの重要性は極めて高い。コンビニチェーンのMD(マーチャンダイザー)に、取り扱いを決めてもらえることは間違いないだろう。次に、コンビニオーナーが自店のために発注し、多数フェイス棚を確保してくれるかが一つのキモだ。

 そのためにはPromotion(コミュニケーション・販促)をどのように展開するかが最大のポイントとなってくる。コンビニオーナーへの働きかけは、一つにはマージン施策がある。通常、飲料はファーストロットはぐっと仕切り値を下げて提供されるので、その時点ではある程度棚確保が可能だ。継続が難しい。ヒット前の商品に棚を割くには、「売れそう」とオーナーに思わせることが欠かせない。CMを大量に投下することは、消費者に対するアピールと同時に、チャネル関係者にもアピールしているのが通常だ。しかし、「大人のキリンレモン」は「家族品質だもん」のブランド本体との整合性を考えると、あまりCMを大量に投下するとは考えにくい。
 
 では、どのようなコミュニケーション戦略が展開されるのだろうか。それはキリンホールディングス「キリン プラス-アイ」プロジェクトの傘下商品ラインアップを見てみると、何となく想像ができる。キリンビバレッジ「大人のキリンレモン」以外には、キリンビール「休む日のAlc.0.00%」 、キリンビバレッジ「ウコン[ダブル]」、小岩井乳業「大人のヨーグルト」、キリン協和フーズ「Cayu~na(かゆ-菜)」だ。正直なところ、カテゴリトップブランドにはなれていない商品が多い。また、ノンアルコールビールの「休む日のAlc.0.00%」は普通にプロモートすれば、自社のトップブランド「キリンフリー」とのカニバリ(食い合い)は免れない。そうした「訳あり商品」ともいえる存在が、「回復系アミノ酸オルニチン」で連携を図ったとも見て取れる。
 つまり、コミュニケーションは販促は、「大人のキリンレモン」だけでなく、ここの商品ではなく、あくまで「キリン プラス-アイ」連合として展開されることになるだろう。つまり、「大人のキリンレモン」の正否は、プロジェクトの成否そのものに左右されることになると予想される。

 、「回復系アミノ酸オルニチン」は同じくグループ会社の「協和発酵バイオ株式会社」の開発によるものだという。グループ大団結のプロジェクトと、キリンレモンの大人戦略の行く末から、目が離せなくなってきた。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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