国際会計基準を導入することで企業側にもメリットがあると言われていますが、それは本当でしょうか。資金調達の観点から考えてみます。
本サイトへの投稿記事は
aegifの国際会計基準専門ブログ IFRS of the day(http://aegif.typepad.jp/ifrs/)より引用しております。
国際会計基準は最近日本でもかなり注目を集めるようになりました。
会計基準の話とはいえ、単なる経理処理の問題では済みません。
国際会計基準ベースで企業の決算を開示することになるので
企業と投資家のコミュニケーションは大きく変わることになります。
国際会計基準は広く世界で採用されているので
資金調達の面で以下のようなメリットがあると言われています。
* 海外企業と財務諸表の比較可能性が高まり、海外の投資家にもアピールできる
* 財務諸表の透明性が高まり、資本調達コストが低くできる
* グローバルでの資金調達が容易になり、資金調達の選択肢を広げることができる
一般論でよく言われていることとはいえ、本当にそうなのか、という疑問があります。
この疑問に対して、すでに国際会計基準が定着しているEUでは実証研究が試みられています。
そのひとつに、国際会計基準が企業の資金調達コストにどのような影響を与えているか
調査しているものがあります。
それによると、
* 比較的規模の大きい企業で
* エクイティファイナンスを中心に行なっている
* 海外からの投資の比率が高い
という企業については、資金調達コストが下がっているという報告が多いようです。
また、EU諸国ではドイツなどのように強制適用の前に
国際会計基準の任意適用を認めている国もありました。
そのような国で任意適用を行なった企業の方が
強制適用時に導入した企業より資金調達コストが低くなる傾向を
示したということです。
(ICAEW: EU IMPLEMENTATION OF IFRS AND THE FAIR VALUE DIRECTIVE)
このような実証研究もまだ初期段階で
確定的な結論が得られるところまでには至っていないのですが、
企業財務への影響を考える上で参考になります。
国際会計基準は投資家保護を非常に重視している会計基準です。
財務やIRといった観点からも国際会計基準導入の意味を考えるべきです。
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2009.02.10
2015.01.26