仕事の3極 ~亀治郎とヴェーバーとチャップリンと

2010.03.28

組織・人材

仕事の3極 ~亀治郎とヴェーバーとチャップリンと

村山 昇
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

人の数だけ、仕事の数がある。そして仕事には諸々の相がある。この日、私が思い浮かべたのは「求道としての仕事」、「ゲームとしての仕事」、そして「労役としての仕事」である。


……おとといの晩の布団の中、寝付く前の私の頭の中をぐるぐると廻った3つのもの;

「市川亀治郎」
「マックスヴェーバー」
「チャップリン」

1)革新歌舞伎の求道者
その晩、NHKハイビジョン番組『伝統芸能の若き獅子たち』を観た。
革新的な歌舞伎を創造する「澤瀉屋」(おもだかや)を受け継いだ市川亀治郎さんの煮えたぎる挑戦の日々を追っていた。
(ちなみに、翌日の同番組シリーズは、文楽人形師の吉田蓑次さんを追っていた。
こちらも素晴らしくよかった)

市川亀治郎にとって、歌舞伎役者というのは、
もはや仕事とか職業とかを超越し、彼の生命活動そのものだという印象をもった。
そしてその生命活動は、求道というマグマをエネルギー源にしている。
そのギラギラした生命こそが、
異端、異彩、革新とされる「澤瀉屋」の血脈によく似合う。

いずれにしても、 「求道としての仕事」 がそこにはある。
加えて言うと、道を究めていくためには、師匠-弟子関係というのが重要になる。

2)『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』にある言葉
ちょうどいま、人事評価制度について調べものをしている。
企業の人事評価制度はいまや、とても大がかりで複雑なものになっている。
処遇体系のグランドデザインを設計し、目標管理方法を仕組み化し、
職能基準をつくり、コンピテンシー項目を設定し、
業績の定量・定性評価方法を考え、
公正・公平な査定ができるよう評価者研修を実施し・・・
私も組織・人事系のコンサルタントであるので、
このあたりの制度の必要具合はある程度理解できるのだが、
どうも近年の状況は、公正・公平な評価を金科玉条として制度だけが肥大化しているように思える。
(制度に使われている、というか、立派な制度つくって魂入らずというか)

それはさておき、
垣根をなくしたグローバル市場経済で、企業同士が行うビジネスはますますスポーツ化、
言い方を変えれば、利益という得点を競い合う高度なゲームになってきている。
(“戦略:strategy”という経営用語が示す通り、まさに企業は戦い合っている)

そして同時に、企業で働くサラリーパーソンにとっても、
仕事はますますスポーツ化、ゲーム化している。
自分がどれくらいのパフォーマンスをし、どれだけの分け前に与れるのかが、
小難しく設計された評価制度によって判定されるわけだ。

私は、マックス・ヴェーバーの次の言葉を思い出した。

 「アメリカでは富の追求はその宗教的、倫理的意味を失い、
 純粋に世俗的情熱と結合する傾向があり、
 それが営利活動にしばしばスポーツの性格を実際に与えている」

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村山 昇

キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。

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