私の部下で新卒入社のI君は、社会常識が欠けています。 挨拶をしない、朝は遅刻、会議にも遅れる、言葉遣いが悪い、報告・連絡をしない・・と数え上げたら枚挙にいとまがありません。信じられないのは、会社から給料をもらっているという意識が全くないことです。まだ仕事もまともにできないのに、給料が安いなどと会社に対する不平をいいます。
時折、注意はするものの、納得している様子はありません。
なぜ、彼のような人材を採用してしまったのか、採用での失敗かとも思いますが、このような部下をどのように指導したらいいでしょうか?
(マスコミ マネージャー 女性 35歳)
【答】I君への妬(ねた)みを止めるべし
まず、あなたの心に問いかけて欲しいことがあります。
『 I君は、今ここにいるべき人なのかどうか? 』
もし、あなたの答えが「NO」なら、どんな素晴らしい指導テクニックを使っても効果はほとんどないでしょう。
なぜなら、I君に対する“存在否定”の感情があるとすると、I君はあなたの指導を受け入れた場合、自分の存在を否定することになるので、本能的に拒否をするのです。例えば指摘しても「そんなことは仕事の成果には関係ないよ!」といった言い訳で。
つまり、あなたの育成の努力が報われない可能性が高まるのです。
『でも、社会人として彼の行為を認める訳にはいかないでしょう』と思われるかもしれません。
確かに、行為を認める必要はありません。行為を認めなくても、存在を認めることはできます。
この違いは大きいのです。
では、存在否定の感情があるとして、それはどこからやってくるのか、考えてみましょう。
出発点は、I君を妬(ねた)む感情です。
「えっ、まさか!」と思われたでしょうか。
その「まさか」です。I君の行動は、あなたが守ってきた基準(社会常識)にことごとく触れています。ただしその基準は、あなたが心から望んで守ってきた訳でなく、嫌々我慢して守ってきたという背景があります。もしかすると、強制的に守らせた先輩や上司などを『許せない』という気持ちが残っているのかもしれません。
そういったあなたの基準は、『我慢の価値』として無意識に追いやられています。
そして、我慢の価値に抵触する行動を、あなたの部下が行うと、『私は我慢して守ったのに!』といった妬みの感情が勝手に沸いてくるのです。
その妬みの感情は「まさか」と思ったように、自分でも理解できず行き場がないので、代償として相手を受け入れない、つまり否定する感情に変わるのです。
人としてごく普通の現象ですが、そう考えると人の心は本当に面白くできています。
根本にあるのは、『我慢の価値』。
別の見方をすると、我慢の価値とは、あなたが未消化の価値ともいえます。もし、消化することができれば、“妬み→存在否定”という流れが止まります。この流れが止まれば、仕事にも人間関係にも、いい影響がたくさん生まれます。
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