宮本茂氏の設計哲学~よくできたゲームと面白いゲームの違いは(2)

2010.03.08

経営・マネジメント

宮本茂氏の設計哲学~よくできたゲームと面白いゲームの違いは(2)

ITmedia ビジネスオンライン
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マリオシリーズや『Wii Fit』などで世界的な支持を獲得している任天堂の宮本茂氏。ゲームデザイナーとしての30年間の業績が評価され、第13回文化庁メディア芸術祭では功労賞が贈られた。受賞者シンポジウムでは、エンターテインメント部門主査の河津秋敏氏が聞き役となり、宮本氏が自身のゲーム設計哲学を語った。 [堀内彰宏,Business Media 誠]

 海外で一番任天堂の評価を上げたのが、『ゼルダの伝説 時のオカリナ』(1998 年)だと思います。ここからどっと海外に出て行くのですが、任天堂の広報が僕をクリエイターとしてPRしてくれたりしました。海外ではそれまで、任天堂は米国や欧州の会社と思っている人が多かったんですね。ビデオゲームの代名詞として“nintendo”と言っていたりしていたのですが、「日本の会社だったのか」「日本人が作っているのか」とやっとみんなが気が付き出します。

いつまでもマリオしかやらないんですか


宮本 『スーパーマリオ64』や『ゼルダの伝説時のオカリナ』などが3Dゲームの基本を作ったと言われます。そのころ僕は3Dの勉強をするためにPCの3Dレースゲームを見ていたのですが、自分のクルマが画面に描かれていないんですね。自分がコックピットから見ているということなので。

 僕らのゲーム感覚だと、マリオをコックピットに描かないと、そこにいるのが分からないと思うし、描くのが基本なんです。そこで描こうとすると、意外なことが分かりました。マリオを描くと、その分のポリゴン処理能力が必要になるんです。「マリオを描く分の能力を活用すれば、背景がもっと描けるんじゃないか」ということです。「そういう処理の限界に挑戦しながら、みんな作っているんだな」と思いました。

 また、それまでの3Dゲームでは、ある固定の視点からものを見ていました。僕らは演出をしたいので、そうではなく3Dゲームの中にカメラがあることにして、「そのカメラをどういう風に作るのか」ということが3Dゲームの基本になると思ったのです。映画の演出のように、プレイヤーキャラクターを客観的に見る演出がしたかったので、複数のカメラがあるということを軸に3Dゲームを作ろうと思いました。

 そこで『スーパーマリオ64』ではジュゲムというキャラクターがカメラをぶら下げている絵を作って、プレイヤーに「これからあなたはカメラを触るんですよ」ということを分かってもらい、カメラを動かしてもらう。

 それが『ゼルダの伝説時のオカリナ』になると、剣で戦闘をする時にはカメラが背後に回りこんで、誰かにロックオンした状態でカメラが動くとか、塔を上っていくときには塔を中心にカメラがグルグル回って、どこにいてもプレイヤーキャラクターがちゃんと見えるようにするとか、複数のカメラを使うという仕組みを作ったんです。それが多分「3Dアクションゲームの基本を作った」と評価されるところだと思います。「自分がやったことがないことに入っていくのは、いろんな発見があってとても楽しいな」という時期です。

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