ファストリ・柳井会長の「無敵宣言」を読み解く

2009.10.15

経営・マネジメント

ファストリ・柳井会長の「無敵宣言」を読み解く

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

2期連続で増収増益、8年ぶりに最高益を書き換え、「一人勝ち」といわれるファーストリテイリング。今月8日に前期連結決算を発表したあとに、東証で記者に囲まれコメントした柳井ファーストリテイリング会長兼社長の言葉は、事実上の「無敵宣言」と解釈できる。

 だとすると、990円はジーユー、3,990円はユニクロであるが、1万円を超えるのは何だろうということが気になる。それは現在は実際に1万円のジーンズを扱っているわけではないが、恐らく10月2日にリニューアルオープンした銀座のユニクロ旗艦店に出店した、傘下のキャビンが展開する「ZAZIE(ザジ)」「 enracine(アンラシーネ)」などを意味しているのだろう。今までグループ内での相乗効果がうまく発揮できていなかったが、ユニクロと生産拠点や素材を一部共通化するというテコ入れで、商品の平均単価を20~30%下げることに成功した。今後は両ブランドも含めて顧客を囲い込んでいこうという意向を示した発言であると解釈できる。

 さらに、先の「(高価格帯から低価格帯まで)全プライスをやっていく」は、ジル・サンダーのプラスジェイだけでなく、現在のところ手つかずになって相乗効果が生まれていない、より高価格帯の婦人衣料ブランドへのテコ入れも意味しているかもしれない。グループ内にはまだ、ブランド資産が眠っている。ニューヨーク生まれのファッションブランド「Theory (セオリー)」。パリ生まれのブランド「COMPTOIR DES COTONNIERS(コントワー・デ・コトニエ)」。フランスのランジェリーブランド「PRINCESSE TAM.TAM (プリンセス タム・タム)」。これらが動き出せば、本当に「(高価格帯から低価格帯まで)全プライス」をおさえたことになる。容易なことではないが、2020年度のグループ売上高を5兆円にするという目標達成のためには、縮む国内市場だけでなく海外展開が欠かせないのと同時に、ユニクロ一本勝負ではなく、複数ブランドでのポートフォリオ展開が欠かせないからだ。

 柳井会長兼社長の短い発言からも、同グループの戦略にブレがないことと、自信のほどが伺える。向かうところ敵なしの、事実上の「無敵宣言」である。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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