湖池屋CM「コイケ先生」こと阿部サダヲは誰に語りかけている?

2009.09.19

営業・マーケティング

湖池屋CM「コイケ先生」こと阿部サダヲは誰に語りかけている?

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

阿部サダヲが若手中学校教師「コイケ先生」を演じる、湖池屋ポテトチップスのCM。商品の「味」には全く言及せず、ひたすらアドリブの効いた独特の世界観を醸し出している。その意図は何だろうか。

昨年から始まった「コイケ先生シリーズCM」も現在、第5弾が放映されている。昨年は放送批評懇談会主催のギャラクシー賞CM部門で優秀賞を受賞するなど快進撃を続けているのだ。
同社のCMといえば、「ヒーヒーおばあちゃん」のカラムーチョや、「ポリンキー劇場・三角形の秘密はね」のポリンキー、「ドンタコスったらドンタコス!」のドンタコス、「スコーンスコーンコイケヤスコーン~♪」のスコーンなど、ユニークなCMは枚挙にいとまがない。一連のCMと商品の連携は、同社の開発したユニークな商品をさらにユニークなCMで告知して盛り上げるという構図になっており、括弧書きしたように、そのCM内容もキャッチコピーやフレーズが極めてわかりやすくて印象的だ。
しかし、「コイケ先生」は少々様相が違うように思われる。

商品はド定番商品のポテトチップスだ。1962年に湖池屋が全国で初めて量産化に成功した由緒正しい商品であるが、もはや独自性も新規性もないことは明らかである。CMの「コイケ先生」は、従来のオリジナルキャラクターで目をひいたり、印象的なコピーやフレーズで話題をさらうものでもない。コイケ先生を中心とした生徒や教師同士のやりとりを見て、少し考えさせてニヤリと笑わせるタイプの内容だ。からっと分りやすいというより、どちらかというと少々ネチっこくてクセになるCMだと言える。つまり、「コイケ先生」シリーズは、従来と全く異なる商品とCMの連携パターンを展開しているのである。

スナック業界で考えれば、リーダー企業は「カルビー」であろう。板橋区、北区と同じく東京の城北地区に本拠を置く両社であるが、両社の売上げ規模は桁が一つ違う。
湖池屋の戦いは、即ちカルビーとの戦いでもある。コンビニやスーパーの棚では常に両社の商品が競うように並べられる。特にコンビニなどの狭小店舗では、うっかりすると棚自体を失いかねない。そのため、チャレンジャーらしく商品でも、CMでも常にユニークさを前面に出して差別化戦略を徹底しているのだ。

では、「コイケ先生」もカルビーとの戦いのために展開しているのかと考えると、店舗の棚を見ると実はそうではないことに気がつく。
今日、コンビニやスーパーの棚を席巻しているのはプライベートブランド(PB)商である。安さを武器に棚を我が物顔で大半占領し、哀れ、湖池屋の商品は隅に追いやられている。まさしく、敵はPB商品なのである。

PB商品対抗のために、「コイケ先生」は消費者にアピールしているのかといえば、実はそれだけでもない。カルビーに比べて二番手メーカーである湖池屋は、うっかりすると本当に店舗の棚から追いやられる危機に瀕している。では、棚を失わないためにはどうしたらいいのか。もちろん消費者が購入してくれることは重要だが、そのためにもまず、棚に並ばねばならない。まずは、小売業者のマーチャンダイザー(MD)が発注してくれることが必須である。また、コンビニであれば、チェーンのMDが仕入れた商品一覧が並ぶ仕入れ端末に表示された画面から、さらに店主に選ばれなければならない。
MDもCM展開している商品であれば、消費者からの支持もあると考え発注する気になるだろう。店主もついつい、発注画面をポチッと押す気になるだろう。しかし、定番商品なので、ブームを作って大量に仕入れてもらえるようなことはない。長くチャネル関係者の記憶にネチっこく残って、常に発注してもらえるような効果がCMにも求められるのである。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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