テレ朝・角澤アナが語る、スポーツ実況の内幕~後編~

2009.08.20

ライフ・ソーシャル

テレ朝・角澤アナが語る、スポーツ実況の内幕~後編~

ITmedia ビジネスオンライン
“ニュースを考える、ビジネスモデルを知る” ITmedia 編集部

早稲田大学は7月10日、大隈小講堂で公開フォーラムを開催、テレビ朝日アナウンサーの角澤照治氏がスポーツ実況に10数年関わった経験を語った。[堀内彰宏,Business Media 誠]

「沈黙に勝るものはない」と思うこともある
角澤 視聴者の反応は痛いほど気になります。皆さんの意見がすごく貴重なのは分かっていて気にしているのですが、それは結局100%自信を持っていないからだとも思います。これはいけないことなのかもしれないのですが、ミスをいっぱいしていて、実況を終えた後は常に不安だし、「今日の自分の実況は完璧だったな」と思ったことなんか1度もないので、「しかるべき反応が来ているのだな」とは思います。

 僕はこれも久米さんに泣きついたことがあります。久米さんは久米さんで、「ニュースステーションを始めた時にはものすごく批判が多かった」と。当時はニュースショウというのがなかった時代で、ニュースというと「こんにちは、ニュースをお伝えします」といったような、言葉は悪いのですがNHKさんが昔やっていたような堅いニュースばかりでした。ニュースステーションのように自民党がやっていることを半分ククっと笑いながらやるような手法はなかったので、「本当にふざけてると自分も言われたんだ」と。ただ、「有名税というか、それだけ注目してもらっているんだと角澤君思いなさい」と久米さんに言われました。それでも僕は落ち込んでいましたけどね。

 テレビはラジオと違って、サッカーのようなスポーツだと音声を消しても内容が分かるので、「お前の音声、消して見ているよ」という投書をいただいたこともあります。そういう中でどこに気を付けて実況するかをひと言で言うと、「見えていないところをどういう風に自分の中でふくらませてあげるか」というところだと思います。取材の過程で見えてきたもの、その選手たちがどんな思い、喜怒哀楽を持ってピッチに立っているのかということを表現してあげる。ただ、そればかりを言っていると資料の押し付けになってしまうので、その辺の難しさというのはあります。

 考えてみると、アナウンサーの実況口調などは時代によって変わっているかもしれません。昭和初期の実況を聞くと、「前畑頑張れ」「頑張れ、頑張れ」しか言っていなかったりしてそれが名実況と言われた。でも、当時の日本を勇気付けたのは間違いなくあの実況だったわけで、そうなると実況はその時代とともに進化させなくてはならないと思うのですが、僕の中ではその意識はあまりありません。サッカーという競技の中で自分の実況技術を向上させることは大切だと思っているのですが、あくまでサッカーというのは起きていることがすべてです。僕の頭の中では見ている人はただ単にその競技を純粋に楽しみたいと思っているだろうし、僕がどんな実況や個性を出そうと思っても、見ている人は多分関心がないと思って基本的にはやっているつもりなので、あまり個性を進化させようとかそういう意識とかは正直ありません。

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