日本初、細胞バンクビジネスのミッションとビジョン(3)

2009.08.18

開発秘話

日本初、細胞バンクビジネスのミッションとビジョン(3)

INSIGHT NOW! 編集部
インサイトナウ株式会社

自分の肌の細胞を使い医療や美容に役立てる。セルバンクすなわち自己細胞バンクは、高度先進医療のシンボル的な企業だ。細胞ビジネスを立ち上げたセルバンク社の問題意識、今後の展開戦略、細胞バンクが拓く医療の可能性などを探る。

こうして起業資金は何とか集めたが、それはそっくりそのまま設備投資に消えてしまう。開業こそしたものの最初から売り上げが上がるほど甘くはない。たちまち運転資金が底をつきそうになった。

■人のための仕事、だから人が助けてくれる

「エンジェルといえばもう一人、いくら感謝してもし尽くせないぐらいの恩を受けた方がいますね。毎月150万出すから、患者を送り込む枠を確保してくれといって資金援助してくれた方がいます」

患者を送り込む枠とはどういう意味だろうか。

「要は、何も見返りなしにお金をあげるとは言えないでしょう。だから口実としてそんな話をされたんだと思います。事業を立ち上げたときは何かと大変だよ、できるだけ応援するからとおっしゃってましたから」

投資ではない。何しろ見返りゼロ、契約書さえなかったという。この資金はまさに干天の慈雨となった。セルバンク社のビジネスモデルでは、開業当初が何よりきついのだ。何しろ日本初のビジネスであるが故に、そうは簡単に顧客が寄ってくるはずもない。

「一年目の売り上げはたしか1000万円ぐらいだったでしょうか。そんな我々にとっては、年間1800万円の資金提供がどれだけありがたかったか。この方のおかげで、何とか二年目に突入できたようなものです」

手を差し伸べてくれた人は他にも何人かいた。手弁当で顧問を務めてくれた弁護士や将来に備えて会計監査をしてくれたプロたちである。

「創業メンバーの給料さえほとんど出せなかった時代が続きました。当社を支えてくださった方々に報酬をお支払いできるようになったのも、ようやく4年目からですよ」

金はない。しかしアイデアはある、ビジョンは素晴らしく、志も高い。だから、周りの人がつい手を差し伸べたくなる。人を引き寄せる不思議な魅力を北條氏は持っていたのだ。その北條氏にビジネスとしての勝算はあったのだろうか。

「技術は、すでにアメリカでFDAのお墨付きまで取っているものを輸入したのです。だから間違いはない。といっても誰もが簡単に真似できるものではありません。皮膚の再生に携わっている研究者は、日本でもごくわずか。極めて高度な専門性を要求されるビジネスだけに、回り始めさえすれば先行者利益は大きいと踏んでいました」

何とか最初の一転がりはできた。だからといってすぐに転がり続ける体制になったわけではない。まだまだ苦難の道が続いたのだ。

※FDA(Food and Drug Administration):http://www.fda.gov/

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