影響力を解剖する(3)無意図的影響力-2

2007.08.15

ライフ・ソーシャル

影響力を解剖する(3)無意図的影響力-2

松尾 順
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

「人に影響を与えること」は、大きくは 「意図的」と「無意図的」 に分けることができるということでした。 そして、無意図的な影響力は、 『影響力を解剖する』 では、次の6種類が挙げられています。

・参照影響力
・行動感染
・観察学習(モデリング)
・傍観者効果
・社会的促進・社会的手抜き
・漏れ聞き効果

今回は、このうち後半の3つについてご紹介します。

[傍観者効果]

高齢者や妊婦が社内に乗り込んできても、
誰も席を譲ろうとしないので、自分も寝たふりをしてしまった。

これが傍観者効果。

周囲に人がいると、

「自分以外の誰かがやってくれるだろう」

と考え、文字通り「傍観者」になってしまうことです。

他人の存在が、無意識に自分の

「見て見ぬふり行動」

を誘発してしまうのですね。

実は、傍観者効果が見られる出来事は、
かなり頻繁に起きています。

ちょっと前のことですが、
列車内で隣に座った赤の他人の男性に脅され、
暴行された女性を満員の乗客の誰も助けなかった
という事件がありました。

また、以前友人から聞いた話ですが、
ある外国人の方が空港の待合室で気分が悪くなった。

ところが、明らかに具合が悪いことが見てわかるのに、
誰も声をかけてくれなかったそうなのです。

傍観者効果は、残念ながら
個人の倫理観では防げない問題です。

しかし、自分が当事者というか、
例えば、街中で倒れてしまった時に誰も助けようと
してくれなかったら大変ですね。

こんな時の解決策は、通り過ぎる特定の人に向けて、

「そこの赤い服の人、助けてください」

などと呼びかけることなのだそうです。

こうすることで、多数の人がいることによって
分散してしまった「社会的責任」を特定の人に
押し付けてしまう。

さすがに、名指しされて無視する人は少ない。
そして、一人が助けると周囲の人も寄ってきてくれます。

[社会的促進・社会的手抜き]

一緒に勉強する仲間がいると勉強がはかどる。

こんな現象が、「社会的促進」です。

他者(観察者や共行動者)の存在が、
自分の作業の量(増加することも減少することもある)に
影響を与えてしまうのですね。

社会心理学者のザイアンスによれば、
他者(観察者や共行動者)がいることによって、

慣れている仕事の場合には作業量が増加し、
慣れていない仕事の場合には作業量が低下する

ことがわかっています。

一方、「社会的手抜き」とは、
単純作業を何人かで一緒にしているときに起きる現象。

これが「社会的手抜き」です。
傍観者効果に近い心理があるように思いますが、
集団で同じことをやろうとすると、一人ひとりの
モチベーションが下がってしまうのです。

たとえば、運動会の綱引きの時、
自分だけ力を入れているふりをしませんでしたか。

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有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。

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