斜陽企業の憂鬱

2007.08.06

組織・人材

斜陽企業の憂鬱

横井 真人
産業能率大学 教授

次の業界再編はどこでしょう?次は自分の番かも知れません。ある会社で行った意識調査で分かったことは・・・。

先日、台風接近にも関わらず、大幅に時間オーバーしてしまった
研修があります。

この会社は中堅食品原材料メーカーです。数年前に同系列の
会社が合併し、出来た会社です。重複した生産設備を閉鎖し、
それなりに合理化を図り、比較的安定した業界秩序の中で
目立たずとも、堅実に生き残ってきましたが、業績はパッとしません。

ところがこの業界にも更なる業界再編の兆しが見え隠れし始めました。
金融や製薬のように大手数社に集約される構図がまことしやかに
業界では囁かれているようです。
加えてこの会社が社運をかけていた新規事業が伸び悩んでいる
ことも不安の種となっています。

社長の要請を受け、管理職へ意識調査を実施し、その結果を元に
執行役員を含めた管理職全員に合宿研修を行いました。

意識調査の結果をいくつか紹介しますと:
・ セグメント別営業利益に満足していますか?不満足80%
・ 組織体制に満足していますか?不満足23%
・ 人事育成の仕組みに満足していますか?不満足60%
・ 今後どの事業を伸ばすべきでしょうか?
? 既存事業:20%
? 不動産事業:50%
? 既存新規事業:70%
? 新たな新規事業:40%
・ 今後伸ばすべき事業は誰が考えるべきですか?
? 経営者30%、管理職25%、選任チーム5%

この会社の問題は管理職が現状に満足していないのに、
当事者意識を持っていないことでした。
残念ながら経営陣(取締役以上)は親会社からの出向者で占められ、
現場を100%把握しているとは思えません。
キチンとした判断を上にしてもらうために、
あなた方は何をするべきだと思いますか?
というのが研修のメッセージでした。

時間がたつに連れ、複雑な背景が少しずつ見えてきました。
地方都市にある工場と東京本社は母体が異なり、
まずここに意識の差が発生する要因があります。
東京サイドからは工場を売却し、その資金で海外に工場を建設すれば
という極端な意見も出ました。工場サイドからしてみれば既存事業を
成功させないと自分達の居場所がなくなってしまいます。

既存新規事業がなぜうまく行っていないのでしょう。
その物質はダイエットや成人病対策に有効らしいのですが、
その生産コストが他の方法より3倍高いことが判明しました。
だったら生産方法を変える判断もあってもよいのでは?

その物質の認知度を上げることも必要との意見も出ました。
そして雇ったコンサルティング会社はマス向け告知をすべきとの
アドバイスをしているようです。
砂浜に塩を撒くような出費をするより、食品メーカー向けの
企画営業を徹底する方が大事ではないでしょうか?

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横井 真人

横井 真人

産業能率大学 教授

個人と組織のパフォーマンス向上を研究。人の行動をスキル、知識、行動意識、感情能力、価値観等の要素に分解し、どの要素が行動に影響を与えているかの観点からパフォーマンスを分析。職場のコミュ二ケーション、リーダーシップ、チームビルディング、ファシリテーション、ソリューション営業、マーケティング等の具体的施策に視点を活用する。

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