マーケティングでヒット商品は作れるのか?

2009.05.23

営業・マーケティング

マーケティングでヒット商品は作れるのか?

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

過日、ビジョナリーの松尾順氏がコラム「ブルーオーシャン戦略の要諦」で、成功例として任天堂のWiiを挙げていた。一方、Wiiの成功が、果たしてマーケティングの力によるものなのかという議論がしばしばなされる。そこで、マーケティングでヒット商品は作れるのか?ということを考えてみたい。

マーケティングのキモは、顧客のニーズを抽出して、それを深掘りすることである。
一方、Wiiという製品のキモは「加速度センサー」を組み込んで体感ゲームに仕上げたこと。しかし、消費者は「加速度センサー」の存在を知らない。いくら掘ってもニーズとして出てこないことになる。ここに、どのような成功のヒミツが隠されているのか。
逆説的にいえば、消費者の顕在化したニースに対応するのは誰でもできる。また、潜在的なニーズを多少掘り起こすぐらいでは、まぁまぁヒットぐらいのレベルにしかならない。誰も知らない、誰も気がつかないような需要を創出したからこそ、Wiiは大ヒットしたともいえる。
しかし、それは結果論。後付の分析だ。ゼロベースで考えた時、どのような思考過程を経て作り上げられていったのだろうか。

任天堂のすばらしいことは、「立ち止まって俯瞰してみたこと」である。
1960年にセオドア・レビット教授がハーバード・ビジネスレビューで発表した論文にある「マーケティング近視眼」に陥らなかったことだ。米国の鉄道事業は自らを輸送産業と定義せずに、鉄道会社同士の競争にあけくれた結果、自動車産業や航空産業に破れ衰退した。そうした近視眼的な経営を「マーケティング・マイオピア(近視眼)」と呼んだのである。

実は、任天堂も近視眼に陥って痛い思いを二度も続けてしたことがある。スーパーファミコンと、NINTENDO64である。ハードウェアは独自の高度な規格にこだわり、ソフトも高度な開発ができるサードパーティーを厳選し、子供のおもちゃ的なゲーム機のイメージ脱却を狙ったが、プレイステーション、プレイステーション2に破れることとなった。また、次世代のニンテンドーゲームキューブもプレイステーション2に一矢報いることはできなかった。

恐らく、ここで任天堂は立ち止まって考えたのだろう。プレイステーションやXboxとだけ戦いを繰り広げても意味がないと。
マクロ環境に目を向けてみれば、そもそも、1990年代後期からゲーム機市場は縮小傾向にある。ハードウェアの性能向上によって実現した、高解像度で美しいグラフィックス、高度なゲーム内容。しかし、それについてこられる人は少なく、ゲームはどんどんマニアな世界になっていく。
任天堂と競合のビジネスドメインを比べれば、おのずと進むべき道が見えたのではないだろうか。ソニー・コンピュータエンターテイメント(SCE)の母体は電機メーカー。マイクロソフトはソフトウエアの巨人。そして任天堂の出自は花札、トランプの製造である。ハードウェア、ソフトウェアでの戦いは得策ではない。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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