「飲む○○」の挑戦!

2009.04.29

営業・マーケティング

「飲む○○」の挑戦!

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

飲料業界に「飲む○○」が流行するようになったのはいつの頃からだろうか。最近では、「飲むプリン」、「飲むゼリー」などなど、やたら目にする。しかし、その歴史は意外と古いのだ。

例えば、「飲むプリン」。パイオニアはポッカコーポレーションだろう。1991年に上市し、18年の歴史を誇る「プリンシェイク」は、「飲むだけでなく、振って楽しめ、食感が楽しめる、デザート感覚の飲料」(同社ホームページより)という独自のポジショニングを追求している。「振って崩して飲む」飲料は、昨今ずいぶん数多いが、そんなとんでもないことを最初に考えてしまったのは、たぶんポッカだ。
ポッカの「飲むプリン」は、プリンの食感にこだわり「振って適度に崩れる固さの設定と、口でとろけるプリンの食感のバランス」(同)を追求し続け、今春、5代目のリニューアル商品が上市された。

だが、ちょっと待て。
「プリンはスプーンですくって食べればいいんじゃないのか?」という健全な疑問も排除することはできない。しかし、そこには職場の事情というものも少なからず作用しているように思う。
昨年6月、江崎グリコが行った調査では、職場でおやつを食べる習慣は定着しつつあるも、年齢の高い社員を中心としてまだまだ抵抗感を示す層も多いと伝えている。
まして、昨今の経済危機下では、ゆとりがなくなって殺伐としている職場も増えただろう。「オフィスグリコ」に手を出すこともはばかられる空気の中、「でも、お菓子が食べたいの!」と思ったら、飲むしかない。そんな職場だけではないかもしれないが。「抜け駆けおやつ需要」に「飲む○○」は応えているのではないだろうか。グリコもプリンの食感向上にさらに磨きをかけようというものだ。

そんな世の中のニーズをすくい取ろうというのか、大型ブランドも「飲む○○」に参入してきた。「飲むティラミス」。キリンビバレッジの「世界のキッチンから ティラミス・ラテ」が3月31日に発売された。

従来、「世界のキッチンから」、通称、「セカキチ」は、「世界を旅して、世界のお母さんの料理からインスピレーションを受けて」、独自の飲料に仕上げることをコンセプトとしている。その卓越したアイディアは、唸るような数々の味を実現してきた。期間限定商品が基本のセカキチシリーズではあるが、ロングセラー化しつつある「とろとろ桃のフルーニュ」など、はじめて飲んだ日には、感動で頬を涙がぬらしたものだった。

しかし、「ティラミス」である。インスピレーションを受けたオリジナルの味ではない。飲料によるスイーツの再現。セカキチ版、「飲む○○」だ。
シリーズの今までには、恐らく「飲む○○」は存在していなかったように思う。なのに、あえて、それを作ったのは、「でも、お菓子が食べたいの!」「だから飲むの!」という名もなき市井の人々の声に応えようとしたからか。
セカキチにとって、これは一つの危険な賭だったともいえよう。「飲む○○」は飲料によってどれだけ○○の味を再現できるかがカギだ。成功すれば、従来の「誰も体験したことのない新しい味」という切り口に加え、「○○の味の再現」というもう一つの切り口を手にすることができる。しかし、味の再現に失敗したら、従来の評価にも影響を及ぼすことになってしまう。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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