再び100円ショップ業界を「5つの力」で読み解く

2009.03.31

営業・マーケティング

再び100円ショップ業界を「5つの力」で読み解く

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

日経MJ 3月30日号に100円ショップ業界の新しい動きが掲載されていた。 その意味を再び「5つの力」で読み解いてみよう。

両社はそのバリュープロポジションを実現するために、前述の5つの力のうち、強い力を弱める工夫をしている。売り手の交渉力をワッツはまず弱めた。<特定の三社に対して独占的な供給契約を結ぶ見返りに大量調達をするほか、子会社を通じ直輸入すること仕入れコストを削減。通常より量が多くても100円で売れるPB作りに成功した>という。
セリアはもともとメーカーと共同で商品開発をする方針があったが、<「PBに関してはさらにパッケージや商品のデザイン、素材まで細かく話し合う」>と同社社長がコメントしている。メーカーと一体となって商品開発を徹底的に行う。売り手と一体となって味方に引き込めば、交渉力を弱める効果がある。
売り手の交渉力を弱めてバリュープロポジションを構築する。一般の100円ショップと差別化することによって、業界内の激しい競争から一歩抜きに出る。結果として、消費者から選んでもらえる。つまり買い手の交渉力も弱まるという構図が実現しているのだ。

5つの力分析は、業界内で働く多くの力が強く厳しい状況である場合、「業界定義を変える」という示唆も与えてくれる。厳しい業界であれば、そこから抜け出して、他の土俵で戦う選択をするということだ。
その意味からすると、セリアは一般の100円ショップ業界から、業界定義を「オシャレ100円ショップ業界」という独自の業界定義をしたといえる。特にオシャレ感を前面に出した新型店舗は「カラーザデイズ」というネーミングで展開しているという。「どこでも同じ」と思われがちな100円ショップ業界の中で、明確な差別化ができているため、他社と同列に消費者から扱われないという効果も期待できる。

普通にやっていたのではモノが売れない時代。たった100円の商品をめぐって、厳しい業界の中から抜け出そうとする企業の姿から学ぶものは多いといえるだろう。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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