売れる理由と儲かるしくみ

2009.03.29

営業・マーケティング

売れる理由と儲かるしくみ

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

先週、日経新聞朝刊に「今時の売れ筋」と題するコラムが2回にわたって掲載された。その中でサラリと紹介されていた二つの事例、掘り下げてみると非常に興味深いことがわかる。

コラムは<消費低迷のなか、逆風をものともせずにヒットを続ける商品やサービスがある>とはじまる。その一つめとして紹介されているのが格安スーパー「ザ・プライス」の不揃いな魚や野菜だ。<しっぽが欠けていたり大きさがまちまちだったりと普段、流通ルートに乗らない規格外の魚を一括仕入れして実現した>という価格は、例えばアジが1匹77円だという。<特定農家と契約して野菜も提供>しているというが、その値段はタマネギ1個9円、ピーマン7円だ。<鮮度が良ければ、形に対する主婦らの反発は予想外に小さく>店は繁盛しているという。

文中で絵紹介されていないが、「ザ・プライス」はセブン&アイ・ホールディングス傘下の、株式会社イトーヨーカドーが運営するディスカウントストアである。同グループは採算性の悪いイトーヨーカドーをザ・プライスに転換を進めており、首都圏を中心に現在5店舗が営業している。
同店の低価格の秘密は、チラシや店内装飾などの販促費の削減と、食料品に集中し、大量仕入れをしていることと、川口店のWebサイトに説明がある。さらに、そこには『各売場の特徴』として、<青果売場や鮮魚売場では、標準品の他に、形は不揃いながらも品質は確かな「規格外」の青果や魚介類を、契約産地や市場より直接買い付けし、流通コストを削減>と明記してある。間違いなく不揃いな魚や野菜は目玉商品なのだ。

流通において、目玉商品を何にするかは極めて重要な課題だ。なぜなら、その目玉商品で客を集め、その他の商品でしっかり利益を稼ぐというマージンミックスで利益を創出するからである。目玉商品は場合によっては赤字覚悟のプライシングをする。「ロス・リーダープライシング」という。
ロスリーダーにはスーパーの場合、卵や牛乳などが設定されることが多い。なぜならば、価格が安定しており、設定した価格がどの程度安いのかがわかりやすいからだ。では、生鮮品を設定した場合どうだろうか。普通に考えれば、相場がわからないので果たして安いのかどうかわかりにくい。また、明らかに安い場合は、品質は大丈夫だろうかという不安感を客に抱かせることになってしまう。
その点、ザ・プライスの「ふぞろいな魚と野菜」は安さの理由が明確なので安心感が醸成できる。バブル崩壊以来、消費者は「賢い消費者」たらんとする傾向が非常に強まった。「合理的で納得感があること」は必須だ。それ故、この事例は「売れる理由」が明確であり、また、上手なロスリーダープライシングによるマージンミックスでしっかり儲けられていると考えられるので、秀逸な展開だといえるだろう。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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