「名物に美味いものなし」は、本当か?

2009.03.01

営業・マーケティング

「名物に美味いものなし」は、本当か?

中村 修治
有限会社ペーパーカンパニー 株式会社キナックスホールディングス 代表取締役

古い喩に「名物に美味いものなし」なんと言いましてーなんて、落語の枕みたいに。不況だ。倒産だ。困ったニュースがあまりに多いので、ここはお気楽に土産話でも一席。

供給側の都合

②市場が全国区=工業化+流通優先。


名物になると売れ始める。売れ始めるということは、工業化を進めざるをえなくなる。流通チャネルの開拓が優先になる。するとコンプライアンスが重要になる。昔ほど、味にこだわれない。こだわるのは、安心や安全や、安定した商品供給ということになる。

工場のラインを揃えたら、その維持のためには、流通チャネルの確保とその維持が必要なために、販促費用と流通マージンが必要となる。そうやって、市場は全国に広がるが・・・結果、すべてが画一的になって、均質化していく。「まずくない」ことが最低基準となっていく。

そうなると、一見さんの観光客との接点が重要なので、主要交通拠点での土産店の販売は、一種異様なオーラを放つことになる。そのオーラ込みで、名物土産の市場は成立している。

価格と中身

③名物土産に安いものなし。


上記のようなお客様の意識+供給側の都合によって、当然、価格に販促費や流通対策費が加算されるので・・・土産物は、地元のお菓子とかより、比較的高くなる。味と価格のバランスを正確に考えた場合、不釣り合いな事が多い。これも、「名物に美味いものなし=期待はずれ」の大きな要因だろう。

・・・では、それだけなのか?
名物土産が「そこそこの量産」化に走る原因は、それだけか?
そこで、皆さんに考えてもらいたい。
実は、それぞれの名物のある地元の人々は、その名物を食しているのか?
私は、福岡在住なので・・・「24位 博多通りもん」が、
いまの博多土産の主流ということになる。
他にないミルク餡が、なかなかいけてる。
でも、おまえは、それをいつ食べたのか?と言われたら、遙か昔のことだ。

④名物土産は、地元で食べている者なし。


京都にも5年住んでいたことがあるが、
「4位 八ツ橋」を、その地で食べた事など記憶にない。
「東京バナナ」を、東京の人達が食べているのを見たことない。
名物土産って、地元にとっては、近いようで遠い存在なのだ。
言い換えると、近いところでのPDCAが回らない・・・
強いチェック機能が働かない商品であると言える。

悲しいことだが、地元の人達が、毎日食べて、切磋琢磨を続ける商品は・・・
こだわるが故に、決してその生産量は、全国の規模にはならない。
過剰販促で、お化粧をすることもない。
「地元名物に美味いものあり」であり、
「全国名物に美味いものなし」なのである。

だから、観光客や出張族にとっての
名物土産は、「安全パイ」という大人のお土産なのである。
お後がよろしいようで・・・・。

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中村 修治

有限会社ペーパーカンパニー 株式会社キナックスホールディングス 代表取締役

昭和30年代後半、近江商人発祥の地で産まれる。立命館大学経済学部を卒業後、大手プロダクションへ入社。1994年に、企画会社ペーパーカンパニーを設立する。 その後、年間150本近い企画書を夜な夜な書く生活を続けるうちに覚醒。たくさんの広告代理店やたくさんの企業の皆様と酔狂な関係を築き、皆様のお陰を持ちまして、現在に至る。そんな「全身企画屋」である。

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