「ソニーVAIO type P」がオンナ心をわしづかみ!

2009.01.15

営業・マーケティング

「ソニーVAIO type P」がオンナ心をわしづかみ!

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

「予約しないと買えない!」とネットで話題騒然のソニーのバイオ・type P。しかし、実際に購入予約をしたり、検討したりしているのは熱狂的にBlogなどで記事をアップしているようなパソコンのヘビーユーザーだけではないようだ。

バイオ・type Pのキャッチコピーは”小さい、軽い、美しい。「ポケットスタイルPC」誕生”。
そのコピー通り、CMでは歩く女性の、ジーンズのポケットにtype Pがしっかりと収まっている。
http://www.vaio.sony.co.jp/ (バイオトップページにCM動画あり)

確かに「美しい」。カラーリングのキレイさや、仕上げの質感の良さが伝わってくる。まさか本当にポケットに入れて歩くことはしないだろうが、小さい、軽いもよくわかる。よくできたCMだ。魅惑的な女性のヒップラインに目を奪われることなく、商品に目が引きつけられる。

冷静になって、商品スペックを見てみる。
液晶は1600×768ピクセルと高解像度だ。メモリも標準で2GB載っている。ソニーらしくブルートゥースも搭載している。
が、CPUは「インテル Atom 」。この時点で、実はこれが「ソニーも”ネットブック(ミニノート)”市場に参戦」と噂されていた商品なのだと気付かされる。
5万円を切るか切らないかで激しい価格競争を繰り広げているネットブック、もしくはミニノートPCと呼ばれる低価格ノートパソコン市場に乗り込んだソニーは、オシャレな外観とちょっと豪華なスペックで9万円台という価格戦略を提示してきた。約倍近い価格をものとせず、購入予約をしているのはどんな人なのだろう。

「予約されている方の半数以上が女性ですよ」。ヨドバシカメラの店員が語った。
「ネットブックは本来セカンドマシンの位置づけなので、決してスペックが高いとは言えないので1台目のパソコンとしてはあまりお勧めしないとご説明しているんですが、女性の方は固くご購入を決めて予約されておりまして」と、予約者の様子も伝えてくれた。
バイオtype P、オンナ心をわしづかみだ。

顧客が製品を購入する主たる理由をKBF(Key Buying Factor)という。ノートパソコンで考えれば、軽さやバッテリーの持ち、画面の見やすさ、タイピングしやすいキーピッチなどが挙げられるだろう。確かにtype Pはそのいずれも満たしている。
しかし、予約者の過半を占めるという女性たちのKBFはそこにあるのだろうか。恐らくそれだけではないだろう。

P.コトラーの提唱した「製品特性3層モデル」で考えてみる。
ノートパソコンを購入するにあたって、顧客が手に入れたいと考える「中核となる価値」は、「持ち運んで便利に使えるPC」であることだ。そして、その「中核」を実現するための製品の「実体」は、「小さくて、軽くて持ち運びに便利」なことだ。電源の心配をしなくともいいという「バッテリーの持ち」も欠かせないだろう。さらに次の段階は、それがなくとも「中核となる価値」は損なわれないが、あればより魅力的な製品となる要素としての「付随機能」だ。ここにソニーは「美しい」という要素を持ち込んだのである。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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